行政書士法人GOAL代表
石下 貴大
1978年栃木県生まれ、立教大学法学部卒。2014年に行政書士法人GOALを設立し、現在は全国4拠点・スタッフ15名体制。創業融資・資金調達・補助金申請を軸に、法人設立から許認可申請まで企業の経営をトータルで支援している。
東京都行政書士会所属(登録番号 第08080849号)
元全国産業資源循環連合会青年部協議会 相談役
上智大学ロースクール環境関連講座運営委員
CONTENTS
2026年1月施行の改正行政書士法では、無資格者への書類作成委託が両罰規定の対象となり、企業にも罰金が科される可能性があります。コンサル料名目の支払いは違法なのか、自社の業務フローは適法か。確認すべき点を4つのステップで解説します。
改正行政書士法が令和8年1月1日(2026年1月1日)に施行され、無資格者による官公署提出書類の作成について、業務制限の趣旨がより明確化されました。外注先が行政書士法に抵触していないか、不安を抱えている企業担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、法改正の要点から企業が取るべき具体的な対応までを解説しており、自社の行政手続きフローを法改正に適合させ、コンプライアンス違反やそれによる罰則のリスクを回避するための知識を得ることができます。

2026年1月に施行された改正行政書士法は、企業のコンプライアンス体制に大きな影響を与えます。
特に、これまで慣習的に行われてきた外部コンサルタントや関連事業者への行政手続きの依頼が、違法行為とみなされるリスクが高まります。
弊所でも実際に、PCKK補助金/『運輸部門エネルギー使用合理化・非化石エネルギー転換推進事業費補助金(トラック輸送省エネ化推進事業)』、FIT/「固定価格買取制度」、再生エネルギー関連の補助金の他、電気保安関係や太陽光蓄電池系補助金や入札等のご相談が急増しております。「これまで慣例的に施行会社、関連会社や営業代行会社、販売メーカーが申請代行を行ってきたが今後は必ず行政書士に依頼しなくてはならない。しかしそれだけの件数をこなせる事務所は全国にも僅かのため困っている」ということでご相談、ご依頼を頂いております。
そこで、自社が意図せず法違反となる事態を避けるため、本記事では法改正の要点理解から具体的な対策までを4つのステップで解説します。
このステップに沿って対応することで、法務リスクを低減させることが可能です。
今回の法改正で最も重要なポイントは、行政書士でない者がいかなる名目を問わず報酬を得て行政手続きの書類を作成する「非行政書士行為」について、禁止される範囲が条文上はっきり示されたことです。
これまでも違法であることに変わりはありませんが、「コンサルティング料」「手数料」といった名目で対価を受け取っていた場合はどうなのか、という点が曖昧なまま運用されてきました。改正後は「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と明記され、名前の付け方では逃げられないことがはっきりしました。また、例えば工事代金や売買代金に含まれるから手続きの費用はいただいていない、というケースも明確に違反となりました。
あわせて、両罰規定(第23条の3)の対象範囲も拡大されています。書類を作成した本人だけでなく、その人が所属する会社にも罰金刑が科される、という仕組みです。
改正後の行政書士法では、行政書士資格を持たない者が「官公署に提出する書類」の作成を代行し、報酬を得る行為が厳しく禁じられます。
ここでの「報酬」は、その名目を問いません。
「コンサルティング料」「手数料」「業務委託料」といった名目であっても、実態として書類作成の対価と判断されれば違法となります。
重要なのは、契約上の名称ではなく、金銭の授受が書類作成業務と関連しているかどうかです。
したがって、これまでの慣習で無資格者に書類作成を依頼していた企業は、運用を根本的に見直す必要があります。

今回の改正で企業が特に注意すべき点の一つが、「両罰規定」の新設です。
これは、行政書士法に違反する行為を行った個人だけでなく、その個人が所属する法人に対しても罰則が科される可能性がある規定です。
具体的には、違反行為者には「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」が、そして法人には「100万円以下の罰金」が科される可能性があります。
知らずに無資格者へ業務を委託していた場合でも、企業としての管理責任を問われ、ペナルティを受けるリスクがあるため、委託先の適格性確認が不可欠です。
行政書士法がこのタイミングで改正される背景には、無資格者による不適切な行政手続き代行の横行があります。
特に、補助金申請や在留資格関連の手続きにおいて、高額なコンサルティング料を請求しながらも専門知識が乏しいために申請が不許可となるケースや、不正な申請に関与する悪質な業者が増加しました。
このような状況は、申請者である企業や個人に不利益をもたらすだけでなく、行政手続き全体の信頼性を損なうものです。
そこで、国民の権利利益を保護し、行政制度の円滑な運用を確保するため、規制の明確化と罰則強化が急務とされ、今回の法改正に至りました。
法改正の要点を理解した上で、次にご自身の会社に関連する業務にどのようなリスクが潜んでいるかを確認していきましょう。
法改正の影響は、特定の業種や業務において特に顕著に現れます。
補助金申請、外国人の雇用、自動車の登録、建設業や運送業の許認可など、日常的に行政手続きが発生する業務を洗い出し、どこに非行政書士行為のリスクが潜んでいるかを具体的に特定することが重要です。
自社の業務フローを棚卸しし、外部委託している業務の実態を正確に把握することが、リスク管理の鍵となります。
事業再構築補助金やIT導入補助金などの申請において、経営コンサルタントや中小企業診断士に書類作成を依頼している企業は注意が必要です。
彼らが行政書士資格を持たずに申請書類の作成を代行し、成功報酬などを受け取っている場合、その行為は違法となります。
同様に、外国人を雇用する際に、登録支援機関や人材紹介会社が在留資格認定証明書交付申請書(COE)の作成を代行し、その対価として報酬を得ることも非行政書士行為にあたります。
あくまで適法なのは、書類作成に関する助言や情報提供にとどまるコンサルティングや、申請者本人が作成した書類の提出を代行する業務支援です。
自動車ディーラーや中古車販売店が、顧客に代わって自動車登録(新規登録、移転登録など)の申請書類を作成し、その手数料を車両価格や諸費用に含めて請求する行為は、典型的な非行政書士行為です。名目を問わず、また、売買代金のみでサービスで手続きをしたとしても違法なので注意が必要です。
また、運輸局への一般貨物自動車運送事業の経営許可申請(緑ナンバー取得)など、複雑な手続きを無資格のコンサルタントが代行するケースも同様に違法となります。
これらの業務は専門性が高く、無資格者による不適切な申請は事業開始の遅延や不許可に繋がる可能性もあるため、行政書士への適切な依頼が不可欠です。
書類作成の支援を外部に求める際は、資格の有無を必ず確認してください。
建設業界では、元請業者が下請業者(特に一人親方など)の建設業許可申請書類の作成を善意で手伝うケースが見られます。
しかし、その際に作成費用やコンサル料といった名目で対価を受け取ると、非行政書士行為に該当します。
また、不動産業においては、農地転用許可申請や開発許可申請などを、行政書士資格のない不動産コンサルタントやBPOの会社などが代行する事例が散見されます。
これらの許認可は事業の根幹に関わる重要な手続きであり、無資格者の安易な支援に頼ることは大きなリスクを伴います。
自社に潜むリスクを特定できたら、現在の業務フローが法的に問題ないかを具体的にチェックする必要があります。
自社の業務に潜むリスクを把握した後は、現在の業務フローが法的に問題ないかを確認します。
特に、「社内での書類作成はどこまで許されるのか」「グループ会社間の代行は適法か」「どのような契約が無資格者への違法な委託とみなされるのか」という3つの視点から、既存のルールや慣習を一つひとつ検証していくことが重要です。
このチェックを通じて、コンプライアンス上の脆弱性を明確にします。

自社の従業員が、自社のための行政手続き書類を作成する行為は、行政書士法における「業として」には該当しないため、全く問題ありません。
例えば、総務部の担当者が自社の建設業許可更新の申請書を作成したり、人事部の担当者が自社で雇用する外国人の在留資格変更許可申請書を作成したりすることは適法です。
ただし、従業員が個人的に他者から依頼を受けて報酬を得て書類を作成するような場合は違法となります。
あくまで自社の業務の一環として、従業員が給与の範囲内で書類の原案を作成し、手続きを進めることは認められています。
たとえ資本関係のあるグループ会社や親子会社間であっても、法的には別法人として扱われます。
そのため、親会社の従業員が子会社の許認可申請書類を作成したり、その逆を行ったりする行為は、原則として非行政書士行為に該当し、違法と判断される可能性が極めて高いです。
たとえ直接的な報酬のやり取りがなくても、グループ全体の利益のために行われる業務とみなされ、実質的な対価性があると解釈されるリスクがあります。
コンプライアンスを徹底する観点からは、各法人が自社で書類を作成するか、行政書士に依頼するのが安全です。
無資格者への業務委託で違法となる最も典型的なパターンは、「書類作成業務そのもの」を委託し、その対価を支払う契約です。
例えば、「補助金申請書類一式の作成を委託する」といった内容が契約書に明記されている場合や、「申請代行手数料」として報酬を支払っている場合は、明確な違法行為となります。
また、「コンサルティング契約」という名目であっても、実態が書類作成の丸投げであり、コンサルタントが作成した書類を企業側が確認・押印するだけ、といったフローになっている場合も違法と判断されます。
適法なのは、あくまで情報提供や経営助言の対価としてコンサル料を支払い、書類は自社で作成する、という分担が明確な場合です。
業務フローの違法性を確認した後は、実際に委託先との契約内容を見直し、具体的なリスク回避策を講じます。
現在の業務フローに潜む法務リスクを特定したら、次は具体的な回避策を講じる段階です。
特に重要なのが、外部への委託業務に関する契約内容の精査と見直しです。
委託先が行政書士資格を保有しているかの確認を徹底し、契約書上で業務範囲を明確に定め、支払い名目も実態に即したものへ修正することが、両罰規定によるリスクから自社を守るための鍵となります。
業務委託先が行政書士資格を保有しているかを確認する最も確実な方法は、日本行政書士会連合会の公式ウェブサイトにある「行政書士会員検索」システムを利用することです。
氏名や事務所の所在地などから、正規に登録されている行政書士かどうかを調べられます。
また、名刺やウェブサイトに「行政書士登録番号」が記載されているかを確認し、その番号が有効なものかを問い合わせることも有効です。
口頭での確認だけでなく、こうした客観的な証拠に基づいて資格の有無をチェックするプロセスを社内ルールとして定めておくことが重要です。
行政書士と業務委託契約を締結する際には、委託する業務の範囲を可能な限り具体的に明記することが不可欠です。
「○○許可申請に関する書類作成業務」「官公署への提出代行業務」「関連する相談業務」など、依頼する業務内容を明確にすることで、責任の所在をはっきりさせます。
これにより、万が一トラブルが発生した場合でも、契約内容に基づいて対応することが可能になります。
逆に、無資格のコンサルタントと契約する場合は、「申請書類の作成代行を含まない」という一文を明記し、あくまで適法なコンサルティング業務に限定することを契約書上で担保する必要があります。
現在、無資格のコンサルタントに「コンサル料」として書類作成の対価を支払っている場合は、直ちに契約を見直さなければなりません。
まず、書類作成業務を委託内容から外し、その部分については別途、行政書士と契約を締結します。
その上で、無資格のコンサルタントとの契約は、事業計画の策定支援や経営助言など、適法な業務範囲に限定し、報酬もその対価として「相談料」や「顧問料」といった実態に合った名目に変更します。
重要なのは、名目だけを取り繕うのではなく、業務の実態そのものを法に適合させることです。
契約の見直しと並行して、この法改正を機に社内の行政手続きをより効率化することも検討すべきです。
今回の法改正では、特定行政書士が扱える不服申立ての対象が拡大されます。
特定行政書士とは、行政書士がおこなった許認可申請などに対し、行政庁から不許可処分などを受けた場合に、依頼者の代理人として不服申立てができる特別な資格を持つ行政書士のことです。
これまで対象外だった国税や地方税に関する処分なども不服申立ての対象に含まれるようになり、企業が行政処分に納得できない場合の救済手段が広がります。
これにより、万が一の際に企業の権利を守るための専門的な支援を受けやすくなります。

ここでは、行政書士法の改正に関して、企業の担当者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
自社の状況と照らし合わせながら、対応策を検討する際の参考にしてください。
まず契約内容を確認し、書類作成代行が含まれていれば、その部分を契約から外す必要があります。
書類作成は自社で行うか、別途行政書士に依頼してください。
コンサルタントとの契約は、経営助言や情報提供といった適法な範囲に限定し、報酬名目も実態に合わせて見直すことが求められます。
自社の社員が自社の業務として書類を作成することは適法です。
違法となるのは、他者からの依頼に基づき、報酬を得て「業として」書類を作成する場合です。この報酬は名目を問わず、書類作成費そのものでなかったとしても注意が必要です。
たとえ書類の原案作成であっても、報酬目的で他社の手続きに関与すれば、非行政書士行為とみなされるため、明確な区別が必要です。
両罰規定により、違反行為者だけでなく、依頼した企業にも罰則が科される可能性があります。具体的な罰則は法律によって異なりますが、法人には罰金が科せられる場合があります。
これらの規定は企業のコンプライアンス体制や委託先選定の管理責任を厳しく問うものであり、適切な対応が求められます。
2026年1月施行の行政書士法改正は、非行政書士行為に対する罰則を強化し、新たに両罰規定を導入するなど、企業に厳格なコンプライアンス対応を求めるものです。
これまで慣習的に行ってきた無資格者への書類作成委託は、発覚した場合に重大な経営リスクとなり得ます。
企業は、この法改正を単なる規制強化と捉えるのではなく、自社の業務フローや委託先管理体制を見直し、コンプライアンスを強化する絶好の機会と認識することが重要です。
適法な業務プロセスを構築することで、法務リスクを回避し、企業の持続的な成長基盤を固めることにつながります。
また、こうした手続きを専門の行政書士にアウトソースすることは、社内リソースの適正化にも繋がります。今後より採用が厳しくなっていく中で、専門家にアウトソースし、社員はより本業に注力する体制を作るほうがいいのではないでしょうか。
冒頭でもお伝えしたとおり、行政書士法人GOALでも、昨今、様々な大型案件のご相談、ご依頼が増えてきております。全国規模の大型案件の対応実績も豊富であり、月に100-700件程度のご依頼まで、体制作りもしっかり行い対応させて頂いております。
ぜひ当事務所までお気軽にご相談下さい。
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