上智大学法科大学院で講義させていただきました
2017年改正廃棄物処理法施行を受けて、排出事業者や処理業者は、どのような事業展開を考えているのか。新たなビジネス環境はどのようになっているのか。
法律の執行実態はどのようになっているのか。
具体的事例の報告を通じて、廃棄物処理法実務における排出事業者・処理業者の対応の方向性について、多角的に検討するソフィア・エコロジー・ロー・セミナー【Bセミナー】で「産業廃棄物処理実務の最前線」の講師の一人としてお話させていただいてきました。

今回のテーマは「電子契約の仕組みと将来の展望~電子契約書を取り巻く法制度」ということで、自社の関連会社で運営している廃棄物業界特化型の電子契約システム(https://weee.co.jp/)について運用だけでなく、法的側面からのアプローチでお話させていただきました。
e文書法や電子契約法、IT書面一括法、電子帳簿保存法に環境省令など様々な法律が絡む中で、いかにして廃棄物業界特有の要件を満たしながら電子契約によってコスト削減、業務効率化、コンプライアンスの徹底を図っていくのかについてがテーマでしたが、参加者が学生だけでなく、現役の教授や弁護士、廃棄物業界の経営者も多数参加されていたので非常に緊張感のある時間でした。

弊社では産業廃棄物についての許認可だけでなく、業界の発展に貢献するために積極的にセミナーなどでの情報発信や各種関連事業も行っています。
ぜひ講演、執筆などのご依頼がございましたらお気軽にご相談くださいませ。
廃棄物業界の最前線を感じてきた
先日、廃棄物業界の最前線を感じる事ができる場所に行ってまいりました。
環境展などの展示会にいってきたわけではありません。
よりリアルな場所です。それは全国産業廃棄物連合会。
全国産業廃棄物連合会とは
全国産業廃棄物連合会、廃棄物業界では略して全産連といわれますが、正式には公益社団法人 全国産業廃棄物連合会といいます。
産業廃棄物の適正処理を推進し、国民の生活環境の保全と産業の健全な発展に貢献することを目的として昭和53年に創立されました。
なんと僕が生まれた年と同じ。環境系行政書士として運命感じます。
産業廃棄物の適正な処理体制の確立のために全国の処理業者の組織化、経営基盤の整備、研修会の開催、処理技術の研究、福利厚生制度や保険制度の充実、専門誌の発行など事業を展開している全国組織です。
そこに何をしに言ってきたのかというと、その下部組織である全国産業廃棄物連合会青年部様にお呼びいただき、会議のオブザーバーとして参加させていただいたのでした。
全国産業廃棄物連合会青年部とは
全産連の下部組織と言っても、参加されているのは全国の有名な廃棄物事業者の社長様ばかり。
特に今回は正副会長、後半は全国青年部幹事会というまさに全国トップレベルの皆さまが集う会ですので、大変緊張しましたが、それ以上に非常に得るものも多い会でした。
環境省の調査では、廃棄物業界は市場規模5兆円、産業廃棄物の処理業者数は11万社を超えますが、全国から業界を代表するような社長様が集まり、廃棄物業界をより良い業界にすべく、長時間に渡り議論を重ねているのを体感できたのは行政書士という立場からも非常に勉強になることばかりでした。
廃棄物業界の課題
廃棄物業界は非常に多くの課題を抱えています。
世界的にリサイクル率が普及してくる中での経済の圧迫、なくならない不適正処理や不正輸出、法律と実態の乖離、業界に根付くイメージなど業界全体で取り組まなければ解決できない課題が山積みです。
しかし、実際にこうして自分たちのいる業界を良くしよう、より良い環境を後世に残していこうと、非常に忙しい業界のトップランナーたちが意見を出し合って、そして実行しているのです。
正直、一番驚いたのがその熱量でした。自分の会社が良ければいいと思う参加者は1人もいなくて、業界を良くしていかねばならないという使命感の強さに、僕達行政書士も間接的にでももっともっと環境行政に貢献していかねばならないと決意を新たにしました。
改めて僕達行政書士は、行政と事業者との間にたち、法的な側面を中心にサポートし、法の目指す社会を実現する仕事なんだと感じています。
事件は現場で起きているではないですが、法律の勉強とあわせて、こうして現場に触れ、最新の情報を蓄え、個人的に目指す環境系行政書士への道を極めていくべく研鑽していきたいと思います。
水銀含有産業廃棄物について法改正の注意点とは?
平成29年10月1日から産業廃棄物業界で大きな変更がありました。
もともと法改正の多い廃棄物処理法ですが、今回の改正は我々行政書士にとっても申請書が変わるという大きな改正でしたし、廃棄物を排出する側、処理を委託される側にとっても取扱いが大きく変わるものですので、今回は廃棄物処理業者にとって今回の改正で何がかあるのかをお伝えしたいと思います。
水銀廃棄物の適正な管理のための改正
今回の法改正の目的を一言で言えば水銀廃棄物の適正な管理ということができます。
この法改正のもとになった条約が水俣条約、水銀と水俣といえば歴史の授業でも必ず出てきますね。
水俣条約とは
2013年10月に「水銀に関する水俣条約外交会議」を熊本市及び水俣市で開催 「水銀に関する水俣条約」を全会一致で採択され、2017年8月16日に条約発効されました。
この条約の意義は下記のようなものになります。
- 先進国と途上国が協力して、水銀の供給、使用、排出、廃棄等 の各段階で総合的な対策に世界的に取り組むことにより、水銀の人為的な排出を削減し、地球的規模の水銀汚染の防止を目指す。
- 水俣病のような健康被害 や環境破壊を繰り返してはならないとの決意と、対策に取り組む意志を世界で共有し、水俣病の教訓や 経験を世界に伝える。
これをうけて国内の廃棄物処理法施工令も改正され、水銀の一次採掘から貿易、水銀添加製品や製造工程での水銀利用、大気への排出や水・土壌への放出、水銀廃棄物に至るまで、その扱いが大きく規制されることになりました。
産業廃棄物処理業者として注意するべきこと
今回の改正で、新たに「廃水銀等(特管物)」「水銀含有ばいじん等(普通産廃)」「水銀使用製品産業廃棄物(普通産廃)」が定義されました。
(※環境省資料から抜粋)
たとえば、オフィスから排出された廃蛍光ランプは、『水銀使用製品産業廃棄物』に該当することになり、「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」と「金属くず」と「廃プラスチック類」に『水銀使用製品産業廃棄物を含む』という条件が必要になります。
ただし、すでに許可を持っている業者さんには経過措置が取るという自体が多く、下記のような取扱になっています。
- 平成29年10月1日時点で「水銀使用製品産業廃棄物」の取扱いをしている処理業者については、引き続き取扱いが可能です。
- 次の更新時に許可証の書き換えを行ないます。
- 次の更新以前に許可証の書き換えを希望する場合は、「変更届」を提出します。
- 平成34年10月1日以降は、「変更許可」として取り扱われます。
収集運搬や処理基準に注意
たとえば廃蛍光ランプを運搬する際には、水銀が飛散しないように破損を防止するために必要な措置をとったり、仕切りを設ける等で他のものと混合させないことが必要になります。
また、これらを処分するにも処分・再生を行う場合、水銀又はその化合物が大気中に飛散しないように必要な措置を講ずることや、水銀回収が義務付けられているものは、水銀を回収すること、安定型最終処分場への埋立は行わないことなどが定められています。
具体的な方法については各自治体でも運用が異なる点が見受けられますので、実際には許可をお持ちの自治体の運用方法を確認するのがベターです。
マニフェストや委託契約書にも注意
水銀含有ばいじん等または水銀使用製品産業廃棄物を含む産業廃棄物の処理を委託する場合、委託契約書にはその旨を契約書に記載する必要があります。
また、マニフェストにも産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」又は「水銀含有ばいじん等」が含まれる こと、また、その数量を記載することが必要です。
さらに、帳簿にも「水銀使用製品産業廃棄物」又は「水銀含有ばいじん等」に係るものであることを明記することが必要なほか、保管施設をお持ちであれば産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」又は「水銀含有ばいじん等」が含まれる ことを明記しなければなりません。
まとめ
ここまで簡単に今回の法改正における注意点をあげてきましたが、申請などの手続きだけでなく運営上でも大きな変更がある今回の法改正となりました。
10月1日からの施行ですので知りませんでしたでは通りません。
もしこれらの品目を扱う可能性がある場合には、お気軽に下記のフォームから弊社にお問い合わせくださいませ。
某カレーチェーンの廃棄カツ横流し問題の今
カレーはナンよりライス派の産廃担当の石下です。
去年のはじめ、世間を賑わせた某カレーチェーンの廃棄カツ横流し問題がありましたね。
実はあの事件、このカレーチェーン店が委託先の産業廃棄物処理業及び会長を相手に提訴していました。
廃棄カツ横流し問題とは
廃棄カツが処理業者から岐阜県羽島市の製麺業者に横流しされ、その後スーパーなどに流通したこの事件。
大手チェーン店で起きた事件ということもあり、マスコミも連日特集をしていました。
その流れでちゃっかり自分もフジテレビさんから取材をいただくほど日々取り上げられていたほどです。
この問題は大手だったということで注目された以外にも、廃棄物に関わる事業者の方々には大きなショックを与えました。
許可を持っている業者に処理を委託したのに、不正転売という不適正な処理をされてしまい、挙句、マスコミに社名公表されて大きな損害を受けたからです。
明日は我が身といいますか、どうやったら不適正処理に巻き込まれないかについて、しっかり向き合うきっかけになった事件とも言えると思います。
訴えの内容とは
放置されたビーフカツの処理を肩代わりさせられたこと及び社会的信用が失われたとして、委託先の産業廃棄物処理業者と会長に約2千万円の損害賠償を求めています。
既にこの会長や製麺業者の元実質的経営者の男性ら3人は、平成27年8~11月の間に廃棄委託された冷凍カツ約6万枚を処分したと虚偽報告し、委託料約28万円を詐取するなどしたことについて詐欺罪などに問われ、いずれも有罪判決が確定しています。
また、愛知県も処理業者が処分せずに倉庫に残した廃棄物の撤去費用約4千万円を請求していますが、支払いのめどは立っていないとのことです。
不適正処理の背景にあるもの
そもそもなぜ不法投棄や今回のような不正転売が起こるのでしょうか?
その大きな理由は財政上の問題です。通常の取引をするよりも、処理費用がかからない不法投棄や、処理費用をもらっているのに処理せずに転売してしまうのは、会社が傾いているからという理由が大きいのです。
もちろんこの場合には賠償命令が出たとしても支払えるような体力はないでしょうから、結局は廃棄物を排出した会社、つまり処理の委託をしたほうが責任を持って自腹で撤去なり原状回復しなければならないわけです。
処理を委託したのにちゃんと処理されずに損害が発生したのですから、損害倍書の請求はできるでしょうが、今回もきっと支払い能力はないのではないだろうかと思います。それでも提訴に踏み切っているのは、おそらくは自社のイメージ、つまり自分たちは被害者だということを伝えたいのではないでしょうか。
廃棄物の処理を委託する際の注意点とは
今回のケースではそもそも処理の委託費用が極端に安かったと言われています。これほどの大手のチェーン店の担当者が、あまりに安い処理費用何も感じなかったとは考えられないと思っています。
しかも、保管状況を見ても、容易に横流しができるような状況だったと言われています。これでは完全に被害者とは言えないのではないでしょうか?
以前にも排出事業者責任については触れましたが、廃棄物については処理を委託する側、つまりゴミを出す側にも適正処理のための責任があります。具体的には、ちゃんと処理してくれる事業者に処理を委託しなければならないのです。
そのためには、人任せにせず、当事者意識を持って、処理業者と密にコミュニケーションを取って情報共有をし、適切に処理されているかをしっかり確認していくことが必要です。
図解明解 廃棄物処理の正しいルールと実務がわかる本 排出事業者責任に問われないためのリスクマネ…/翔泳社
排出事業者として注意すべきポイントに付いての詳細はこちらの本に書かせて頂いていますので、気になる方はぜひ呼んでみて下さい。
読むのが面倒であればぜひ下部の問い合わせフォームからご連絡くださいませ。
夜中にカレーの記事を書いていたらカレー食べたくなってきたので今日はこのへんで。
使わない理由がない?電子契約書のメリット
IOT、クラウド、AI・・・
どんどん時代は進化しています。
その流れの一つがペーパーレス、電子化です。僕も今ではほとんど本は電子書籍で読んでいますし、新聞も電子版を事務所で購入し、各自に支給しているiPhoneで読めるようにしています。
そんな電子化の中で、これから置き換わっていくであろう電子契約書についてメリットをまとめてみました。
電子契約書とは
そもそも電子契約とは、電子文書を互いにインターネット上のサービスを用いて契約を締結するもので、企業のサーバーや外部のデータセンターなどに電子データを保管しておく契約の方法のことです。
これまで契約といえば「紙と印鑑」によるものでしたが、電子契約による契約締結も法的環境の整備や技術の向上によって着実に広まってきています。
電子契約には下記のようなメリットがあります。
経費削減できる
契約書に収入印紙を貼らなければならない文書であるかどうかは、印紙税法第二条において印紙税の対象となる課税文書が定義されており、国税庁のホームページにも記載されています。(国税庁のHP:印紙税額一覧表)
そして印紙の金額は契約の種類だけでなく、契約される金額によって200円~60万円まで変わります。
例えば建設業の場合には工事請負契約書、工事注文請書は契約金額に応じて200円~60万円の印紙代がかかります。また、当該建設業の現場から出た廃棄物の運搬を委託する場合には、運送に関する契約書として200円~60万円、処分を委託する場合には請負契約書として200円~60万円のうち、それぞれの契約金額に応じた印紙を貼らねばなりません。
ただし、産業廃棄物処理委託契約書が、営業者間で継続的に生ずる取引の基本となる契約書で、契約期間が3ヶ月を超えている、または、契約期間が自動更新される場合は、継続的取引の基本となる契約書にも該当し、4,000円の印紙を貼ることになります。
これらの印紙代は電子契約書にすることで不要になります。
また、紙の契約書のやり取りの場合、メール等で内容を相互に確認後、印刷、製本し、郵送でやり取りをするのが一般的だと思いますが、電子契約書の場合には印刷、製本、郵送が不要ですのでこれらの経費もカットできます。
管理しやすい
建設業や産業廃棄物業務などでは、契約書の保管が法律で義務化されています。しかし、紙の契約書の場合には量もたまりますし、場合によっては保管のために事務所などを借りるような場合もあります。
この点に関して電子契約書ではクラウドなどにデータを保管するため、紛失するリスクもなく、過去の書類を確認する必要があるときには、検索機能を利用して書類の名前などで簡単かつ迅速に検索することもできます。
また郵送にかかる時間の短縮もできますので契約締結までがスピードアップされる他、業務効率化にもつながります。
コンプライアンスを強化できる
書面での契約書をの場合、契約締結の改ざんや紛失などのリスクがあります。
特に大量の契約書を締結するような建設業や産廃業の場合には契約書の管理も非常に大変です。。
一方で電子契約の場合には契約書を電子データとして一元管理することで、紛失リスクを回避し、改ざんなどの恐れも少なくすることができます。
業種によっては契約書の保管義務違反について罰則もありますので、電子契約書によって適正に管理できることは大きなメリットになります。
特に排出事業者責任がかかるような産業廃棄物に関する契約書ではコンプライアンスの見地から電子契約書を導入するメリットは大きいと思います。
まとめ
電子契約書は上記のように印紙税がかからないだけでなく、保存コスト、用紙代や印刷、郵送にかかるコストもカットでき、契約締結にかかる時間も短縮できます。
また、データの管理も容易になりますので業務が効率化して生産性を向上させることもできますし、法令遵守にも役立ちます。
今後一般的になっていくのは間違いないので早めに導入を検討してみてはいかがでしょうか?
ちなみに弊社では産業廃棄物処理業や建設業に特化した形で電子契約書サービスも扱っておりますので、ご興味のある方は下記フォームからお気軽にご相談下さいませ。
全ての事業者に向けた廃棄物の委託処理マニュアルが増刷になりました
仕事に行くときに1歳8ヶ月の息子が泣いてしがみついてきて辛い代表の石下です。
そんなかわいい息子が生まれて半年のときに世に出たこちらの本
図解明解 廃棄物処理の正しいルールと実務がわかる本 排出事業者責任に問われないためのリスクマネ…/翔泳社
これが増刷になったと出版社の方から連絡をいただきました。
伝えたかったこと
これまで5冊の本を書かせていただいていましたが、この本は一番思い入れがあるので増刷の知らせは格別に嬉しい出来事となりました。
初めての子育て、毎晩の夜泣きに四苦八苦している中での執筆だったというのも理由の一つですが、何より自分が環境系行政書士として環境と行政の架け橋になりたいと思ってやってきましたので、その想いが詰まった一冊になったからです。
この本を通して伝えたかったこと、それは廃棄物の適正処理が推進されることによってより良い形で自然や環境を構成に残していくためには、廃棄物を排出する側にも当事者意識、責任をもってほしいということです。
そのために知っておいてほしい廃棄物のこと、そして適正に処理委託するために知っていてほしいことを詰め込んだのが本書です。
廃棄物の委託処理マニュアル
この本を一言で言えば「廃棄物の委託処理マニュアル」だと思っています。
自らが行うのと同じ意識をもって処理業者に委託することが適正処理につながるわけですが、その前提となる知識を得る機会というのは殆どないのが実情です。
- なぜ分別したほうがいいのか?
- ペットボトルのキャップと分けたほうがいい理由は?
- 缶やペットボトルの中に異物を入れないほうがいいのはなぜ?
- 自分たちが出したごみはどのように処理されているのか?
去年は某カレーショップの廃棄カツの不正転売が問題になりましたが、あそこまでの規模の会社でなくても、自分たちの出すごみについての知識をもっていないと本当の意味での循環型社会、適正な廃棄物処理と言うのは広まっていかないのではないかと思います。
廃棄物を排出する側として知っておくべきこと
廃棄物を出す側にも責任があると入っても、自分たちで処理をするのは現実的ではありません。
だからこそ、信頼できる適正な処理事業者を選べるようにすることが大事だと思っています。
国は産業廃棄物の運搬及び処分について、それぞれ許可制をとり、一定の要件を満たさなければ産業廃棄物に関わる業務を行ってはならないこととします。
国民や社会にとって影響の大きな事業だからこそ、こうした許認制をとり、各地方自治体における審査を課しているわけですが、残念ながら許可を取ったからと言って全てが適正な事業者とはいえないのが実情です。
実際に、少なくない数の行政罰が日常的に事業者に課されています。
(詳しくは環境省の産業廃棄物処理業・処理施設許可取消処分情報を参照下さい)
だからこそ、廃棄物を出す事業者側が処理業者に任せきりにするのではなく、自分たちのゴミがちゃんと適正に処理されているのかについて一緒になって考えていくことが大事なのです。
最近は管理会社に任せきりという所も多いようですが、廃棄物が適正に処理されるためには、まず適正な処理は廃棄物を出す側から始まるという意識が大事ですから、まるっきり任せきりというのではいけません。
この本が少しでもこうした廃棄物を出す側の事業者の皆様のもとに届き、間接的にでも、適正な廃棄物の処理が推進されることにつながれば嬉しいです。
核のごみ最終処分場「適地」900自治体が意味するもの
自分の生まれ故郷である栃木県塩谷郡塩谷町
人口1万人ちょっとの小さな町はのいたるところに「断固反対」ののぼりがあります。
実はこの栃木県の小さな町が、放射性廃棄物の最終処分場の候補地に選定されているのです。
核のごみ最終処分場「適地」900自治体に
先日の日経新聞において、経済産業省が7月28日に、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、簡単に言うと核のゴミについて、最終処分場の候補地となり得る地域を示した「科学的特性マップ」を公表下という記事が出ていました。
(引用:日本経済新聞)
マップでは火山や活断層、地下資源が存在するなど8つの条件に当てはまる地域を除いた上で、核のごみを保管地から輸送しやすい海岸から20キロメートル以内の沿岸部を好ましい基準として選んだ。この結果、約900の自治体の地域が安全に処分できる可能性が高いとされた。
これから考えると、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)について、上記の塩谷郡塩谷町は栃木県の真ん中北部の方に位置しますので、最終処分場の候補地に「適していない地域」といえそうです。少なくとも輸送に適した地域ではありません。
環境省においては放射性指定廃棄物の最終処分場候補になり、一方で経済産業省の核の廃棄物の最終処分場の候補地とはされていないということです。不思議ですね。
放射性廃棄物とは
ここで原子力発電所の是非を書くつもりはありませんが、電子力発電所が稼働している限り、核のごみである放射性廃棄物は出続けます。
放射性廃棄物は、放射能レベルの低い「低レベル放射性廃棄物」と、使用済燃料の再処理にともない再利用できないものとして残る放射能レベルが高い「高レベル放射性廃棄物」とに大別されます。
処分にあたっては、廃棄物の放射能レベル、性状、放射性物質の種類などに応じて適切に区分し、管理し、それに応じて適切な方法で処理・処分を行います。
このうち高レベル放射性廃棄物は、非常に強い放射線を出しておりますので、その放射能レベルが十分低くなるまでには数万年にわたり人間の生活環境から遠ざけ、管理する必要があります。
生活環境から遠ざける方法としては、各国で宇宙や海底への処分など、さまざまな方法が検討されてきましたが、他の国と同じように日本では「地層処分」を計画しています。
当事者意識を持つこと
今後、自動車は電気自動車が進むでしょうし、AIの稼働にも電力が必要だと言われています。
国内でこそ少子化が進む可能性が高いですが、世界で見れば人口は増え続けており、必要となる電力もそれに伴って増え続けると考えられます。
その際に、原子力発電所が電気を供給していく限り、この核のごみ問題は残り続けます。数万年も先まで管理し続けなくてはならないのです。
また、処分場の建設などの事業費は3.7兆円ともいわれています。そして周辺環境への影響評価や、実際の掘削調査など20年程度かけて建設場所を探していく方針だそうですが、今が良ければ未来は知ったことではない、そんな無責任な考えや行動にならないよう、我々一人一人がこの地球の住人として当事者意識を持つことが大事だと思います。
無関心が一番怖いですからね。
僕自身、産業廃棄物の専門家を目指している中で、自分の生まれ故郷が放射性廃棄物の最終処分場の候補地に選定されているのも何かの因果かと感じておりますし、引き続き情報収集をして行きたいと思います。
廃棄物を適正処理するのに最も必要なこととは?
※この記事は産廃業・建設業に関心のある方向けの記事です。
田舎育ちで自然大好きな環境系行政書士の石下です。
毎日沢山の廃棄物が家庭や企業から出ています。
こうした廃棄物が適正に処理されなければ、地球はどんどん汚染され、資源は枯渇し、未来に今の環境をバトンタッチできなくなってしまいます。
廃棄物の適正処理のために最も必要なこととは
そもそも不適正な処理とはどういうことでしょうか?
- 不法投棄
- 不正輸出
- 不法焼却
などが挙げられます。
適切な処理なく山や川などに捨てられてしまえば自然に帰ることはなく、場合によっては環境に致命的な悪影響を与えてしまうこともありますし、不正に輸出されてしまえば、日本以外の国で同じような環境汚染を引き起こす可能性があります。
不法に燃やされてしまって体や自然に有害な物質が悪影響を及ぼすこともあるかもしれません。
処分業者だけの責任ではない
廃棄物を運ぶにも、処理をするのにも、それぞれ産業廃棄物収集運搬業、中間処分業、最終処分業という許可を取得する必要があります。
一定の要件を満たさす事業者のみがこれらの業務を行うことができるのは、逆に言えばそれだけ環境に直結する重要な業務であるのです。
当然ながらこうした事業者は法令のもと、適正な処理を行う義務があります。
しかし、産業廃棄物の事業を行う側のみでは廃棄物の適正処理は推進できません。
排出事業者責任とは
廃棄物処理法では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。(第3条)」と規定し、排出事業者の責任が明確化されています。
また、「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物に再生利用等を行うことによりその減量に努める」、「事業者は、廃棄物の減量その他その適正な処理の確保等に関し地方公共団体の施策に協力しなければならない」ことが規定されています。
排出事業者の責任違反には厳しい罰則もあります。
適正な処理は排出事業者から始まる
廃棄物が適正に処理されるためには、まず適正な処理は廃棄物を出す側から始まるという意識が大事だと思います。
自分たちで処理できない場合には適正な処理業者への委託をしなければなりません。
廃棄物管理会社や処理業者に丸投げで自分たちは知らないというのでは、適切な処理は不可能です。
自分たちの出した廃棄物がどのように処理されているのか、従うべきルールは何かを把握しつつ、頻繁な法改正、政省令改正、通知改正に対応できる組織体制を作り、弁護士・行政書士やコンサルタントなどとの 連携を取ること。
そして何より、処理業者との密なコミュニケーションを取っていること。
どうやって分別すればいいか、なぜ分別が必要なのか、どのようにすれば廃棄物にならずに資源として再利用できるのかなどしっかりコミュニケーションが取れていれば不適正な処理は起こらず、処理にかかるコストも削減できます。
今日は排出事業者様にお呼びいただき、私と処理業者様で産業廃棄物の適正処理についての勉強会を開催させていただきました。
経営陣だけでなく、現場の皆様も交えたこうした機会を設けている会社は間違いなく適正処理への意識が高く、不適正な処理を助長しない素晴らしい会社だと思います。
私自身、産業廃棄物に関する許認可手続きだけにとどまらず、適正処理が進むためのこうした研修にも力を入れておりますので、ぜひ廃棄物についての研修のご要望がありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
間接的にでも環境に、自然に貢献する環境系行政書士を目指し、学び続けたものを今後もこちらで情報発信をしていきます!
不用品回収に要注意?不用品回収の許認可とは
週末の朝、気持ちのよい静かな朝に聞こえてくるもの・・・
鳥の鳴き声や、川のせせらぎなどならいいでしょうが、車のスピーカーから大音量で流れてくる音に不快さを感じる方もいるのではないでしょうか?
不用品回収に必要な許認可とは
うちの近所だけかもしれませんが、毎週のように8時頃になると家の前を、「ご家庭で不用になった家具や家電を、無料で不用品を回収します。お気軽にお声かけください」とスピーカーで大音量でアナウンスしながらゆっくり運転する車が来ます。
その時間は家族でご飯を食べているのですが、うるさくて窓を閉めています。12階でもそのレベルなので、低層階の人や近所の方はもっとうるさく感じていると思います。
そもそも東京都の条例でも「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」というものがありますが、他の法令にも違反している可能性が高いのをご存知でしょうか?
不用品回収をするために必要な許可がある
一般の家庭から出るゴミを運搬するためには、一般廃棄物収集運搬業という許可が必要です。
産業廃棄物を運ぶ許可を産業廃棄物収集運搬業といいますが、産業廃棄物は事業活動に伴って出る廃棄物のうち、法律で定められたものをいいますが、一般の家庭から出るゴミ、つまり廃棄物については事業活動に伴うものではありませんので産業廃棄物には当たりません。
不用品回収業者の中には、産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていることをチラシ等にアピールしているところもありますが、一般家庭からのゴミを運ぶためには産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていることは関係ないのです。
一般廃棄物収集運搬業の許可は取れない?
このように一般の家庭から出るようなゴミを収集運搬するには一般廃棄物収集運搬業の許可が必要なのですが、多くの自治体では新規でこの許可を取ることは非常に難しくなっています。
既存の許可を持っている会社などが許可を廃止したりした場合にしか新規で許可申請を受け付けない自治体もあり、許可要件を満たせば許可が取れるというのが一般的な許認可であるのですが、一般廃棄物収集運搬業は例外的な扱いになっています。
買い取る場合には?
では、業者が買い取る場合にはどうでしょうか?
この場合には古物商という許可が必要になります。古物商とは簡単に言うと、中古品の売買、交換等に必要な許可になります。古物商とはもともと盗品を転売するのを防止することが目的ですので、管轄の警察署を経由して、公安委員会に許可申請します。
もし、不用品回収業者が不用品を買い取る場合に古物商の許可を持っていない場合には、古物営業法違反になります。
家電リサイクル法にも違反する可能性も
冷蔵庫や洗濯機などの家電リサイクル品を引き取る場合は、「家電リサイクル法」も対象になってきます。
これらの家電リサイクル品は、不適切な処分をすると、深刻な環境破壊を引き起こすおそれがあります。だからこそ、許可を得た業者が適正な手段で、分解やリサイクルを行うよう、法律で定められているのです。
いわゆる無許可業者が回収、運搬することは、不適正な処理が行われる可能性もあり、環境に対しても悪影響を及ぼしてしまうことにつながりかねません。
この点は環境省も動画やポスターなどで啓蒙していますが、実態としては無許可業者に寄る不用品回収が減っていないようです。
https://youtu.be/H6IJxOvBgGw
まとめ
不用品の回収は廃棄物処理法や、古物営業法、家電リサイクル法や各条例などについて規制があります。
処理を委託する側としても、回収や運搬をする側としても、しっかり法令を守り、廃棄物が適正に処理されていくことで、よりよい環境を未来に残していきたいですね。
産業廃棄物収集運搬業の契約書を適正に作れていますか?
この記事は産業廃棄物の排出事業者、そして産業廃棄物収集運搬業や産業廃棄物中間処分業などの処理業を営んでいる方向けの記事です。
産業廃棄物の処理について作成する義務がある委託契約書ですが、作成だけでなく5年間の保管の義務もあります。
ではこの委託契約書、何通作成すればいいのでしょうか?
委託契約書が必要な根拠について
廃棄物処理法は、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と規定し、廃棄物を排出する側の処理責任を明確にしています(法第3条第1項)。これは排出事業者責任と呼ばれ、廃棄物処理の重要な原則になっています。
廃棄物の処理をする側だけでなく、廃棄物を出す側にも責任を持たせることで、適正な処理を推進し、より良い環境を構成に残していこうという趣旨ですね。
ただ、自らの責任で適性に処理するといっても、自分で中間処分や最終処分するのは難しいでしょうから、処理業者に産業廃棄物の処理を委託し、排出事業者と処理業者の間で適正な委託契約を結ぶ事が必要になります。
委託基準とは
適正な委託契約を結ぶためには、法で定める委託基準に従うことが必要とされており、具体的には下記を満たすことが求められています。
- 処理を委託する相手は処理業の許可を有する(または規則第8条の2の8及び第8条の3に定める)者であること。(令第6条の2第1号、第2号)
- 委託する業者は、委託しようとする産業廃棄物の処理が事業の範囲に含まれていること。(令第6条の2第1号、第2号)
- 委託契約は書面で行うこと。(令第6条の2第4号)
- 特別管理産業廃棄物の処理を委託する場合は、委託する者に対してあらかじめ特別管理産業廃棄物の種類、数量、性状、荷姿、取り扱い上の注意事項を書面で通知すること。(令第6条の6第1号、規則第8条の16第1号、第2号)
- 契約書及び契約書に添付された書類を契約終了日から5年間保存すること。(令第6条の2第5号、規則第8条の4の3)
- 収集運搬の委託は収集運搬業の許可を持つものと、中間処理(再生を含む)または最終処分の委託は処分業の許可を持つものと、それぞれ2者間で契約すること。(法第12条第5項)
委託契約の内容とは
契約内容を明確にするため、委託契約は書面で行うことが義務付けられています。(※電子契約書も可能)
書面への記載が必要な事項は以下のようになります。(令第6条の2第4号および規則第8条の4の2)この法定記載事項が欠如している場合や実際に委託された内容と異なる場合には、委託基準違反として罰則が適用されます。
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契約書の共通記載事項
- 委託する(特別管理)産業廃棄物の種類および数量
- 委託契約の有効期間
- 委託者が受託者に支払う料金
- 受託者の事業の範囲
- 委託者の有する適正処理のために必要な事項に関する情報
- (ア)性状および荷姿
- (イ)通常の保管状況の下での腐敗、揮発等性状の変化に関する事項
- (ウ)他の廃棄物の混合等により生ずる支障に関する事項
- (エ)日本工業規格C0950号に規定する含有マークの表示に関する事項
- (オ)石綿含有産業廃棄物が含まれる場合には、その事項
- (カ)特定産業廃棄物が含まれる場合には、その事項(放射性物質汚染対処特措法施行規則附則第5条)
- (キ)その他、取り扱いに関する注意事項
- 委託契約の有効期間中に前項の情報に変更があった場合の伝達方法に関する事項
- 委託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項
- 契約解除時の処理されない(特別管理)産業廃棄物の取り扱いに関する事項
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運搬委託契約書の記載事項
- 運搬の最終目的地の所在地
- (積替保管をする場合には)積替えまたは保管の場所の所在地、保管できる産業廃棄物の種類、保管上限に関する事項
- (安定型産業廃棄物の場合には)積替えまたは保管の場所において、他の廃棄物と混合することの許否等に関する事項
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処分委託契約書の記載事項
- 処分または再生の場所の所在地、処分または再生の方法および処理能力
- 最終処分の場所の所在地、最終処分の方法および処理能力
契約書は1通作成でもいいのか?
通常、契約書は当事者同士が相手方に対して成立した契約の内容を証明するために作りますので、各契約当事者が1通ずつ所持します。
その場合にはそれぞれについて印紙を貼ることになりますが、ではこの場合、1通のみを正本として保管し、そのコピーを相手方が保管することで、コピーには印紙を貼らないということは可能なのでしょうか?
国税庁のHPには下記のように書かれています。
契約書は、契約の当事者がそれぞれ相手方当事者などに対して成立した契約の内容を証明するために作られますから、各契約当事者が1通ずつ所持するのが一般的です。この場合、契約当事者の一方が所持するものに正本又は原本と表示し、他方が所持するものに写し、副本、謄本などと表示することがあります。しかし、写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、おおむね次のような形態のものは、契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかですから、印紙税の課税対象になります。
- (1) 契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの
- (2) 正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの
なお、所持する文書に自分だけの印鑑を押したものは、契約の相手方当事者に対して証明の用をなさないものですから、課税対象とはなりません。
また、契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名若しくは押印又は証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。
同じく、ファックスや電子メール等により送信する場合も正本等は送付元に保存され、送付先に交付されておらず、送付先で出力された文書は写しと同様であり、課税対象とはなりません。
このように、印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された文書を課税対象とするものですから、一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。
このように、契約書のコピーを保存するのは、「契約の成立を証明する目的」といえますから、コピーであっても印紙の課税対象であるといえます。
ですので、1通しか正本を作成していない事自体は可能ですが、契約の成立を証明する目的で保管しているコピーは印紙税の対象になり、当該に印紙の添付がない場合には、印紙税の脱税になってしまうのです。
このように契約書については印紙税の問題もありますし、内容に不備があると委託基準違反に該当してしまう可能性もありますので注意が必要です。
より詳しく知りたい方は下記の書籍もチェックしてみてくださいね。
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