株式会社の設立を考えるとき、多くの方が気になるのが「費用の内訳」です。
登記や定款認証などの法的手続きに加え、印鑑作成や専門家への依頼にも一定の費用が必要です。さらに、設立後には税理士への報酬や社会保険料なども発生します。
事前に費用を把握しておけば、無理のない資金計画を立てやすくなります。
本記事では、株式会社設立に必要な費用の内訳を整理し、節約のポイントや補助制度の活用方法までわかりやすく解説します。
株式会社の設立にかかる費用の全体像
株式会社を設立するには、さまざまな費用がかかります。とはいえ、何にどれだけ必要なのか、全体像をつかみにくいと感じる方も少なくありません。
設立後にも継続的な費用がかかるため、初期費用とあわせて長期的な視点で計画を立てることが大切です。
まずは、株式会社設立にかかる費用の全体像を整理し、どのような項目があるのかを見ていきましょう。
初期費用とランニングコストの2種類がある
会社を立ち上げる際に一度だけ発生する費用が「初期費用」です。一方、「ランニングコスト」は設立後に継続してかかる費用です。
税理士への報酬や社会保険料、事務所の家賃や通信費などが含まれます。事業の継続に関わるため、初期費用とあわせて長期的な資金計画が重要です。
登記や定款認証など、設立時に必ず発生する費用項目
株式会社を設立する際に発生する費用のうち、代表的なのが「登記」と「定款認証」に関する費用です。
登記は会社を法的に成立させるための手続きで、法務局に必要書類を提出します。この際に納める登録免許税は資本金額に応じて変動する仕組みです。
登記が完了すると、会社として正式に活動できるようになります。
定款認証とは、会社の基本ルールを記した定款を公証役場で認証する手続きです。株式会社の場合は義務となっており、認証は定款の内容に法的な効力を持たせるために必要です。
紙の定款を使う場合は印紙を貼る必要がありますが、電子定款を利用すればその費用を抑えることができます。
いずれも設立に不可欠な手続きのため、事前に内容を理解しておくことが重要です。
株式会社設立にかかる主な初期費用
株式会社を設立するには、いくつかの初期費用がかかります。
主に法的な手続きに関する支出が中心です。ただ、具体的にどんな項目があるのかを知らないまま準備を進めると、思わぬ出費に戸惑うこともあります。
必要な費用と任意の費用を把握しておけば、無駄を減らし効率的に資金を活用できます。
この章では、株式会社設立時に必要となる主な初期費用について、どんな費用が含まれるのかを見ていきましょう。
定款認証(公証人役場)の費用
株式会社を設立する際には、定款認証の手続きが必要です。
定款とは、会社の基本的なルールをまとめた文書で、株式会社の場合は公証人役場での認証が法律で義務づけられています。
この認証を受けることで、定款に法的な効力が生まれ、登記手続きへと進むことができます。
定款認証にかかる費用は主に3つです。
- 公証人への認証手数料
- 定款の謄本作成費
- 収入印紙代
認証手数料は資本金額に応じて15,000円~50,000円、定款の謄本作成費用として作成ページ数にもよりますが約2,000円ほど必要です。
さらに、紙の定款を提出する場合は収入印紙代の4万円がかかります。
ただし、電子定款を利用すればこの印紙代は不要になり、費用を抑えることができます。
設立時に共通して発生するため、事前に予算に組み込んでおくことが大切です。手続きの流れや必要書類を確認しておけば、余計な手間や出費が防げスムーズに進められます。
登録免許税(最低15万円)
株式会社を設立する際には、法務局での登記申請が必要です。
このときにかかるのが「登録免許税」です。
会社の設立を法的に認めてもらうための税金で、資本金の0.7%が課税される仕組みです。ただし、株式会社の場合は最低税額が15万円と定められています。
資本金が2,142万8,571円以下であれば一律15万円です。
この税金は収入印紙で納付するのが一般的で、登記申請書に貼付して提出します。
登録免許税は初期費用の中でも高額な部類に入るため、資本金の設定とあわせて事前に予算に組み込んでおくことが重要です。
無理のない資金計画を立てることで、手続きの遅れや予期せぬ出費を防げます。
印紙代や謄本・印鑑証明書の費用
株式会社を設立する際には、定款や登記に関連して、印紙代や各種証明書の取得費用が必要です。
まず、紙の定款を作成する場合は収入印紙代として40,000円かかります。ただし、電子定款を使えば、この費用は不要になりコストを抑えられます。
登記後に取得する登記簿謄本(履歴事項全部証明書)は1通600円です。
口座開設や各種申請で複数枚必要になることがあるため、事前に必要枚数を確認しておくと安心です。
また、発起人や役員の本人確認のために印鑑証明書が求められることがあり、自治体によりますが1通300円程度で市区町村の窓口で取得できます。
これらは少額でも合計すると負担になることがあります。
専門家に依頼した場合の報酬
株式会社の設立を専門家に依頼する場合、報酬が初期費用として発生します。
依頼先には司法書士、行政書士、税理士などがあり、それぞれの専門分野に応じて対応内容が異なります。
たとえば、定款の作成や電子定款の認証、登記書類の作成・提出などを代行してもらうことで、手続きの手間やミスを減らすことができます。
報酬の相場は、司法書士に設立手続きを一括で依頼する場合で約80,000〜150,000円が一般的です。
行政書士や税理士に依頼する場合も、業務内容によっては同程度の費用がかかることがあります。「設立手数料0円」とうたう事務所もありますが、多くは顧問契約が前提なので、契約条件を必ず確認しましょう。
専門家に依頼することで、法的な不備を防ぎ、スムーズな設立が可能です。費用はかかりますが、時間や労力の節約につながる合理的な選択です。
また、予算や業務範囲を踏まえ、依頼するかどうかを検討することも大切です。
設立後にかかる年間の維持費用
株式会社を設立した後も、事業を続けるためには毎年一定の維持費用がかかります。
初期費用と比べると見落とされがちですが、継続的に発生するため事前の把握が重要です。また、法人ならではの支出もあり、個人事業主とは異なるコスト構造になります。
正しく理解し予算に組み込むことで、資金繰りの安定やリスクの軽減につながります。
この章では、株式会社を維持するために必要な年間費用の概要を整理し、経営者として押さえておきたいポイントをわかりやすく解説していきます。
税理士報酬などの会計顧問費用
株式会社を設立した後は、税務や会計業務を適切に管理するために、税理士と顧問契約を結ぶケースが一般的です。
顧問契約では、月次の帳簿確認、決算書の作成、法人税や消費税の申告などを依頼できます。
税理士報酬の相場は、月額30,000〜50,000円程度です。
費用は会社の売上規模や従業員数、依頼する業務の範囲によって変動します。訪問頻度が高い場合や、資金調達・節税対策などの追加業務を含む場合は、報酬が高くなる傾向があります。
売上規模が非常に小さい場合や自社で会計処理を行えば、報酬は低額になる場合もあります。
さらに創業支援を行う事務所では、設立初年度の報酬を抑えたプランを提供していることもあります。
このように、税理士に依頼すれば法令遵守と経理の効率化を図り経営に専念できます。費用対効果を踏まえ、必要な業務内容に応じて契約内容を検討することが大切です。
法人住民税・事業税などの税金関係
株式会社を維持するには、毎年一定の税金がかかります。
代表的なのが「法人住民税」と「法人事業税」です。
法人住民税には「均等割」と「法人税割」があり、均等割は利益の有無にかかわらず発生します。
たとえば、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の会社の場合、東京都では年間7万円が最低額です。
一方、法人事業税は利益に応じて課税されるため、一般的には赤字の年は発生しません。税率は事業内容や所得金額によって異なり、一般的な中小企業ではおおよそ約3〜5%が目安です。
これらの税金は、事業年度終了後に申告・納付が必要で、通常は決算日の翌日から2か月以内が期限です。
税理士に申告を依頼することもできますが、自社で行う場合は計算方法や期限に注意が必要です。
税金関係の維持費は会社の規模や利益によって変動するため、毎年の予算に組み込んでおくようにしましょう。
社会保険の加入義務に伴う負担額
株式会社を設立し、法律上社会保険加入義務が生じる従業員を雇用した場合は、社会保険への加入が義務づけられます。
対象となるのは、健康保険、厚生年金、介護保険(40歳以上)、雇用保険、労災保険、子ども・子育て拠出金などです。
これらの保険料は会社と従業員が分担して支払いますが、保険によって負担割合が異なります。
健康保険と厚生年金は労使折半、雇用保険は会社負担が多め、労災保険と子育て拠出金は全額会社負担です。この費用は毎月発生し、賞与にも適用されるため、人件費に大きく影響します。
保険料率は年ごとに改定されるため、最新情報を確認し計画的に資金を管理する必要があります。
その他、事務所維持・通信費などのランニングコスト
株式会社の運営には、税金や社会保険料のほかにも、日常的に発生するランニングコストがあります。
代表的なのが事務所の賃料、光熱費、通信費などです。
最近では、業種・規模・テレワークの普及などにより事務所賃料ゼロのケースもあります。さらに、コピー用紙や文房具などの消耗品、クラウドサービスや会計ソフトの利用料なども必要になります。
これらの費用は業種や働き方によって異なりますが、月に数万円から十数万円かかることもあります。
こうした支出は毎月発生するため、事業計画や資金繰りを考えるうえで欠かせません。
必要に応じて見直しながら、無理のない範囲で予算を組みましょう。
設立費用を安く抑えるためのポイント
株式会社の設立には一定の費用がかかりますが、工夫次第でコストを抑えられます。
特に初期段階では、必要な手続きを見極めて、無駄な支出を避けることが重要です。定款の作成方法や登記申請の進め方によって、数万円単位で差が出ることもあります。
また、専門家への依頼や各種サービスの選び方によっても、全体の負担額は変わります。
設立費用は一度きりの支出だからこそ、予算に応じて効率的な方法を選ぶことがポイントです。
資金を事業運営に回しやすくするためにも、自社に合った手続きの進め方を考えることが大切です。
この章では、設立費用をできるだけ抑えるための基本的な考え方や工夫の方向性について整理していきます。
電子定款を利用して印紙代を節約する
株式会社を設立する際、定款の作成方法によって費用を節約できます。
中でも「電子定款」を使えば、紙の定款に必要な収入印紙代40,000円は不要になります。
これは、電子データで作成された定款が印紙税の課税対象外となるためです。
ただし、電子定款を利用するには電子定款手続の要件を満たす必要があります。
事前に、電子署名の準備や公証役場が電子定款を受け付けるかなど確認をしておきましょう。
設立費用を抑えたい場合は、電子定款の活用が有効です。手間とコストのバランスを考慮して、自分で行うか専門家に依頼するかを判断しましょう。
電子定款の作成と申請
作成には、対応ソフトと電子証明書が必要です。
電子証明書とは、インターネット上で本人確認を行うための「デジタルな身分証明書」です。
公的個人認証サービスや商業登記認証局などが発行し、ICカードやUSBトークンに格納されます。
ただし、取得には申請と本人確認、年間利用料等が必要です。
電子定款の作り方は、まず定款内容をWordなどで作成し、PDF形式に変換します。次に、電子署名を付与するために対応ソフトを使い、電子証明書を付けます。
最後に、法務省の「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を通じて公証人役場へ申請します。
電子定款は紙定款と同様に法的効力を持ち、認証後は登記申請に使用できます。
自作も可能ですが、電子証明書の取得やソフトの操作に不安がある場合は、行政書士や司法書士に依頼するのも有効です。
報酬は10,000~20,000円程度が相場で、印紙代より安く済むことが多いため、コスト削減に役立ちます。
自分で登記手続きを行う
株式会社の設立費用を抑える方法のひとつに、登記手続きを自分で行うという選択があります。実際に、一人で会社を作る方もいます。
通常は司法書士などに依頼するケースが多く、報酬として50,000〜100,000円ほどかかりますが、自分で申請すればこの費用を節約できます。
登記に必要な書類は、定款、発起人の決定書、就任承諾書、印鑑届出書などです。
これらは法務局のホームページや支援サイトからテンプレートを入手でき、内容を確認しながら作成すれば個人でも対応可能です。
提出は管轄の法務局へ持参または郵送で行います。登記を自分で行う場合、費用を抑えられる一方で注意点も多くあります。
まず、登記申請書や定款などの書類に不備があると補正が必要になり、手続きが遅れる可能性があります。
また、登録免許税の納付方法や法務局の管轄確認も重要です。
自分で登記する場合は手続きの難易度が高く、時間や労力に加えミスによる追加コストも発生するおそれがあります。
クラウド会計ソフトを無料で活用する
株式会社設立後の経理業務には、帳簿作成や決算書の作成など多くの作業が発生します。
クラウド会計ソフトを活用すれば、これらの業務を効率化しながら初期費用を抑えられます。
設立初期の法人向けに無料プランや一定期間のトライアルを提供しているサービスもあります。
これらのソフトは、仕訳の自動化やレポート作成、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応など、法人運営に必要な機能を備えています。
特に「ひとり法人」向けのプランでは、低価格で導入でき初月無料で試せるため、操作性や機能を事前に確認できます。
クラウド型のため、税理士との情報共有もスムーズで、バックアップ管理の手間もかかりません。
ただし、無料の期間はサービスによって異なりますので、事前確認が必要です。
資金繰りが厳しい初期には、無料プランの活用で経理負担を減らしコストを抑えられます。
創業支援制度や補助金を活用する
株式会社の設立時には、国や自治体が提供する創業支援制度や補助金を活用することで、初期費用や運転資金の負担を軽減できます。
代表的な補助金には「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」「ものづくり補助金」などがあり、設備投資や販路開拓、業務効率化などに利用できます。
また、「キャリアアップ助成金」や「トライアル雇用助成金」など、雇用や人材育成を支援する制度もあります。
補助金は審査制で採択に差がある一方、助成金は条件を満たせば受給できる可能性があります。
申請には事業計画書の作成や期限の管理が必要で、制度ごとに要件が異なります。
自治体の創業支援窓口や専門家のサポートを活用すれば、スムーズに申請を進めやすくなります。
ただし、補助金・助成金には申請条件・事業期間・対象経費・申請締切などが厳しいケースも多いので注意が必要です。
こうした制度を上手に活用すれば、資金面の不安を軽減し事業の立ち上げを後押しできます。
