事業を始める際に日本政策金融公庫を利用して融資を受けた事業者も多いでしょう。
日本政策金融公庫は個人事業主や小規模事業者に対して融資を行なっている金融機関です。国が100%出資した金融機関となるため、安定的な運営で他にはない制度で融資を実施しています。
しかし、「日本政策金融公庫は追加融資に対応しているの?」「日本政策金融公庫の追加融資に必要な書類や基準を知りたい」と考えている人もいるでしょう。
本記事では、日本政策金融公庫の追加融資の概要、必要な書類を解説します。日本政策金融公庫の追加融資の基準や審査に落ちた時の解決方法も紹介するため、気になる人はぜひチェックしてください。
日本政策金融公庫は追加融資に対応!提出する必要書類は?
日本政策金融公庫は追加融資に対応しています。
追加融資とは、一度融資を受けた金融機関に対して再度融資を申し込むことを指します。日本政策金融公庫に対して追加融資を申し込み、再度事業計画書の提出や状況の確認が行われます。改めて審査を受けて通過すれば、追加融資を受けられます。
追加融資の審査は初回融資時よりも比較的スピーディーに完了します。事業内容に大きな変化がない場合は、2週間程度で審査自体は完了します。
日本政策金融公庫の追加融資で必要な書類は、以下のとおりです。
- 確定申告書
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
- 事業計画書
- 法人用通帳のコピー
日本政策金融公庫の追加融資では、初回融資時に必要な登記謄本・企業概要などの書類は不要です。短期的には変更されない情報は再提出が不要となるため、別書類の準備に力を入れましょう。
特に事業計画書やキャッシュフロー計算書は、初回提出時よりもブラッシュアップが必要です。
追加融資の審査では「なぜ改めて融資が必要なのか」「追加で融資しても回収はできるか」を重点的に確認されるため、前回と同じ事業計画書では審査落ちする可能性があります。
さらに、前回の融資実行時から財務状況に大きな変化がないかの確認も行われるため、キャッシュフロー試算表の提出も必須です。通過融資を申し込む前に自社でも法人用の通帳をもとに現在の財務状況、今後の資産変化を確認しておくと安心でしょう。
初回融資から日が浅い場合は追加融資の面談なしの可能性も
日本政策金融公庫の追加融資は初回融資から日が浅い場合、追加融資なしで融資を受けられることがあります。
融資時の面談は事業計画を担当者へ問題なく話せるか、事業者としての人柄などを確認されます。初回面談時から時間が経過していない状態で面談をしたとしても、変化がないならオンライン面談や電話に切り替える可能性が高いです。
例えば、融資から1〜2ヶ月程度しか経過していない場合は、面談なしで審査を進める傾向にあります。
特に事業モデルや経過が順調な事業者は面談が不要と判断されるケースが多いです。もちろん、追加融資にあたり担当者へ伝えたい内容がある場合は、積極的に面談を依頼しましょう。
日本政策金融公庫の追加融資の審査が厳しい事業者の特徴
日本政策金融公庫の追加融資が厳しい事業者の特徴は、以下のとおりです。
- 赤字経営が続いており返済能力が無いと判断されてしまう
- 公庫以外の他社借入(借入件数・借入残高)が増えている
- 支払いを滞納しており個人の信用情報から確認できる場合
それぞれ順に解説します。
赤字経営が続いており返済能力が無いと判断されてしまう
日本政策金融公庫へ追加融資を申し込む場合、赤字経営が続いていると審査落ちするケースが多いです。
赤字経営の続いている事業者は融資担当者から、返済能力が無いと判断されてしまい、事業計画書の内容がまとまっていても審査がうまくいかない傾向にあります。
日本政策金融公庫の追加融資は赤字を補填するための資金ではありません。現状よりも事業を拡大するために融資を申し込むことから、赤字経営を続けていては内容に説得力が無いと言えます。
また、日本政策金融公庫の初回融資の際は、今後の返済計画や事業推移なども合わせて提示します。
追加融資時に事業の状況がマイナスに傾いていると、融資担当者への説明がつきません。追加融資を申し込む際は、初回審査時よりも説得力が必要となるため、赤字経営の事業者は追加融資の審査が厳しいでしょう。
公庫以外の他社借入(借入件数・借入残高)が増えている
日本政策金融公庫の追加融資が厳しい事業者の特徴として、公庫以外の他社借入(借入件数・借入残高)が増えていることが挙げられます。
初回融資よりも他社借入が増えている場合、融資担当者から「本当に融資金額を返済できるのか」が不安になります。他社借入が増えている状況は客観的に見ると、経営状況が苦しく資金繰りが上手くいっていないと判断されてしまうでしょう。
また、初回融資から他社借入が増えている場合、当初融資した金額の返済すらも危ういと考えられる可能性が高いです。他社借入が増え事業資金から初回融資の返済が難しい場合は、追加融資は厳しいと言えるでしょう。
そのため、日本政策金融公庫の追加融資の審査に通過するためには、他社借入を少しでも減らしておく必要があります。初回面談時に他社借入があった場合でも、順調に返済が進んでいれば審査に通過しやすいです。
経営状況の悪化により他社借入が増えている事業者は、できるだけ借入額を減らしてから追加融資を申し込みましょう。
支払いを滞納しており個人の信用情報から確認できる場合
税金や他事業者への支払いを滞納している場合、日本政策金融公庫の追加融資は厳しいでしょう。
支払いを滞納している事業者は、融資担当者から「融資額を返済してもらえない可能性が高い」と判断されます。融資は金融機関からの借入金となるため、信用情報は非常に重要な部分となります。過去に日本政策金融公庫からの融資金の返済を滞納した事業者は、審査落ちする可能性が高いです。
また、忘れがちですが個人として信用情報に傷がついている場合は、追加融資を断られるケースが多いです。法人としてではなく、代表者が個人的に税金や借入を滞納していると信用情報機関に記録され、返済能力がないと判断されてしまうでしょう。事業者としてではなく、代表者個人としても信用情報に問題ないか、追加審査を申し込む前に確認しておくと安心です。
追加融資を受けたいなら必要である根拠を明確にしよう
日本政策金融公庫から追加融資を受けたいなら、必要な根拠を明確にしましょう。融資が必要な明確な根拠がない場合、申し込んだとしても審査に通過する可能性は非常に低いです。
追加融資の審査では「なぜ追加で資金が必要なのか」が融資担当者に伝わらなければ、融資は実行してもらえないでしょう。
追加融資の根拠を明確にする際は、資金用途をあらかじめ定める必要があります。例えば、融資を設備に使う場合、なぜ設備に投資するのか、設備を整えるとどのような影響があるのかを説明できる必要があります。
そのため、融資担当者に対して、現状と今後の事業内容を伝えて、追加融資が必要な根拠を話すことが重要です。単純に資金が足りないだけではなく、あらかじめ融資担当者を納得させる内容を用意しておきましょう。
決算終了後に追加融資を希望すると経営状況が伝わりやすい
日本政策金融公庫へ追加融資を申し込む際は、決算終了後がおすすめで、決算から時間が経過している場合、追加融資を申し込んでも担当者は経営状況をイメージできない可能性が高いです。
最新の決算情報がなければ、初回融資からどのように事業を運営し、財務状況に変化があるのかを把握できません。状況が把握できない事業者に対しての追加融資は判断が難しく、現状と今後の動きが明確でなければ追加融資は見込めないでしょう。
一方、決算終了後は、決算書を用いて状況を説明できるため、通常時よりも具体的かつ信憑性のある情報を提供できます。最新の決算書は財務状況や経営状況が一目でわかり、追加融資が必要な部分も示しやすいです。
根拠のある説明を行うためにも、日本政策金融公庫の追加融資は決算終了後に実施しましょう。
日本政策金融公庫の追加融資に落ちた時の解決方法
日本政策金融公庫の追加融資に落ちた場合の解決法は、以下のとおりです。
- 融資を受けたいなら保証付融資は比較的審査に通過しやすい
- 売掛金があり入金日まで資金が持たないならファクタリング
それぞれ順に解説します。
融資を受けたいなら保証付融資は比較的審査に通過しやすい
日本政策金融公庫の審査に落ちた際は、保証付融資の利用を検討しましょう。一般的な融資は事業者と金融機関の2社だけで契約を行います。一方、保証付融資は事業者と金融機関・信用保証協会の3社で契約を行います。
保証付融資とは、信用保証協会が保証を行い金融機関から融資を受けられる制度です。
一般的には金融機関から直接融資を受けますが、保証付融資なら万が一支払いが滞った場合、信用保証協会が建て替えてくれます。信用保証協会が間に入ることによって、プロパー融資よりも審査に通過しやすくなります。
日本政策金融公庫の追加審査に落ちた場合や金融機関との取引実績が浅い事業者には、最適な融資制度と言えるでしょう。
ただし、保証付融資を利用する際は、連帯保証人・担保が求められるケースが多く、別途コストがかかります。保証人や担保を用意できる場合は、保証付融資の利用を積極的に検討しましょう。
保証付融資を利用する際は毎月「保証料」の支払いが必要です。プロパー融資では発生しない費用となるため、できるだけコストを抑えて融資を受けたい場合は注意しましょう。
売掛金があり入金日まで資金が持たないならファクタリング
日本政策金融公庫の審査に落ちた場合、ファクタリングの利用も検討してみましょう。
事業運営を行う上で取引サイトの売掛金があり、入金日まで資金が持たないならファクタリングがおすすめです。ファクタリングとは、債権買取と呼ばれる資金調達方法の一つです。通常、請求書を発行し取引先から支払いがあるまで待つ必要があります。一方、ファクタリングなら売掛金を事業者へ売却し、手数料を差し引いた金額をすぐに受け取れます。
また、ファクタリングの特徴として、負債として計上せずに済む点が挙げられます。
一般的に金融機関から借入を行う場合、会計処理を行う際は負債として計上する必要があります。ファクタリングはすでに保有している売掛金を買い取ってもらう仕組みとなるため、借入や融資に当てはまりません。負債として計上することなく資金を調達できるため、経営状況の改善が見込めます。
ただし、ファクタリングを利用する際は取引先への連絡がいく可能性があります。ファクタリング業者と申込者・取引先の3者間で契約を行う「3社間ファクタリング」を利用する場合、取引先へ確認の連絡が行われます。ファクタリングの利用を取引先に秘密へしたい場合は、申し込み前にチェックしておきましょう。
日本政策金融公庫の追加融資に関するよくある質問
日本政策金融公庫から3回目の追加融資を受けることは可能?
日本政策金融公庫では、3回目の追加融資も受け付けています。
日本政策金融公庫の追加融資は、申し込み回数が定められていないため、事業内容によっては3回に限らず、4回・5回でも融資を受けられる可能性が高いです。もちろん、融資回数を重ねるほど日本政策金融公庫の審査通過は難しいとされています。
融資担当者に対して追加融資が必要な理由を明確に説明できる必要があります。さらに、これまで滞りなく借入金を返済している事業者は審査に通過する可能性が高いでしょう。
日本政策金融公庫の追加融資は最短何日で審査結果がわかる?
日本政策金融公庫の追加融資は、最短で1週間〜2週間で結果が出ます。追加融資は初回融資に比べて審査完了までのスピードが早く、手続きを省いて融資を受けられます。
初回融資では事業概要の説明や事業計画書の作成・面談の実施など、審査完了まで複数のフローが存在します。
一方、追加融資は初回融資よりも提出書類が少なく、面談も不要のケースが多いです。追加融資の妥当性、返済の実現性を証明できればスピーディーに審査は完了します。
しかし、希望内容や経営状況によっては面談が必要となったり、通常よりも審査に時間がかかったりします。
日本政策金融公庫の追加融資は2週間前後で考えていると、安心して手続きを進められるでしょう。