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資金調達の基礎知識

制度融資とは?仕組みとメリットを解説

  • 投稿:2024年04月15日
  • 更新:2024年04月17日

資金調達の手段として、制度融資の利用を検討している事業者も多いでしょう。制度融資は一般的な金融機関よりも融資を受けやすく、実績のない事業者でもスムーズに資金調達が可能です。

本記事では、制度融資の概要から仕組み、利用するメリット・デメリットを解説します。制度融資と日本政策金融公庫のどちらがおすすめなのかも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

目次

制度融資の仕組み!保証協会・自治体・金融機関が連携

制度融資とは、保証協会・自治体・金融機関が連携して提供する融資を指します。

小規模事業者や中小企業をターゲットとしており、一般的な金融機関からの融資よりも低金利・低リスクで融資を受けられます。それぞれ1社から借り入れるわけではないため通常より複雑な手続きが必要な一方で、他にはないメリットも存在します。1社だけでは融資が難しい場合でも、3団体が連携することで実現可能にしています。

また、各自治体によって融資制度の内容・名称は異なります。実際に一部地域では、制度融資を「融資あっせん制度」と定めているケースがあります。あらかじめ利用したい制度融資を確認し、自社へマッチする内容をチェックしておく必要があります。

ここでは、保証協会・自治体・金融機関それぞれの役割について解説します。

保証協会の役割は事業者が返済できない時の保証を担う

保証協会の役割とは、資金を借り入れた事業者が返済できない時の保証を担います。

保証協会は事業者に対して債務の保証を実行する立場にあるため、事業者が返済できない場合に代理で返済を行います。例えば、今月の融資返済が難しい場合、一時的に保証協会が金融機関に対して資金の立替えを実施します。もちろん、並行して事業者に対して債務の返済を要求しますが、事前に定めた期間に返済がない場合は保証協会が代わりに対応します。

金融機関は万が一、事業者が返済できない場合でも保証協会が立て替えてくれるため、通常の制度よりも融資が実現しやすいです。

しかし、制度融資を受けるためには、金融機関だけではなく保証協会からの審査に通過しなければなりません。具体的な審査基準は公開されていないものの、一般的には「毎月一定額の返済ができるか」を注視しています。金融機関とは審査項目が異なるため、あらかじめ保証協会向けの審査対策を行いましょう。

自治体の役割は利子補給を行い事業者の負担を減らす

自治体の役割とは、事業者へ利子補給を行い負担を減らすことです。

利子補給は融資で発生する利子の一部を補助する仕組みです。利子補給の金額は自治体によって様々で、一部負担や全額負担があります。地方自治体によって利子補給の内容は異なるため、制度融資を申し込む前に確認しておきましょう。

また、制度融資において自治体は信用保証料の補助も実施しています。融資を受ける際に発生する利子や保証料を自治体が負担することで、事業者が無理なく返済できます。事業者が無理なく返済できる環境を整えることで、結果的に制度融資の利用者増加に繋がっていると言えるでしょう。

金融機関は融資を実行!通常の融資より敷居が低い

金融機関の役割とは、事業者へ融資を実行することです。

制度融資において実際に融資を行うのは金融機関です。自治体や保証協会はあくまでサポートとなるため、事業者の審査を行い資金を貸し付けるのは金融機関の役割となります。制度融資を受けるためには、金融機関からの審査に通過する必要があります。

金融機関の審査では、事業内容や資産状況、今後の返済計画などを事業計画書・面談・自己資金の有無などを含めて総合的に判断します。保証協会の審査も必要となるため、制度融資の審査は難易度が高いと思われがちです。しかし、保証協会と金融機関の審査がある分、申し込み要件は一般的な融資よりも敷居が低く設定されています。

また、制度融資はすべての金融機関で対応しているわけではありません。ゆうちょ銀行や日本政策金融公庫・農業協同組合などの一部金融機関では、制度融資を受けられません。制度融資に対応する金融機関は地方自治体によって異なります。制度融資を申し込む前に、管轄の地方自治体のHPから対応している金融機関を確認しておきましょう。

制度融資のメリットは低金利で融資を受けられること

制度融資を利用するメリットは、低金利で融資を受けられることです。

一般的な金融機関からの融資を受ける場合、金利は2%〜5%程度に設定されることが多いです。一方、制度融資の金利は1%〜3%程度に設定されています。制度融資の金利は、金融機関から設定された金額を地方自治体が負担してくれます。一般的な金融機関から融資を受ける際は、直接の契約となるため金利優遇などの条件はありません。

しかし、制度融資は金融機関の他に地方自治体がサポートを実施し、利子補給を行うことから通常よりも低金利で融資を受けられます。長期的な借入を検討している場合は、プロパー融資より制度融資の方が資産効率が良いケースも多いでしょう。さらに、制度融資は開業期間に関わらず低金利で融資を受けられます。融資実績のない事業者でも低金利で借入できるのは、制度融資のメリットと言えます。

また、制度融資は地方自治体によって独自の融資メニューを用意しています。景気悪化の煽りを受けた事業者や雇用の安定化を目指してサポートを実施しています。創業してすぐや特定の事業者によっては心強い制度融資も存在するため、プロパー融資よりも恩恵を受けられる可能性が高いです。

プロパー融資よりも審査通過できる可能性が高くなる

制度融資はプロパー融資に比べて、審査通過率が高い傾向にあります。

一般的な金融機関から融資を受ける場合、これまでの融資実績や自己資金額・事業運営期間など、事業内容以外の部分にフォーカスされるケースが多いです。特に大手金融機関はこれらの内容を審査項目として重視している傾向にあるため、創業後すぐの事業者では審査に通過しない可能性が高いです。

一方、制度融資は保証協会が金融機関の間に入ってくれます。万が一、借入金を返済できない場合でも、保証協会が返済を行うため、創業後すぐの事業者でも審査に通過しやすいです。制度融資は保証協会だけではなく、自治体による利子補給も実施しています。事業者の返済負担を抑えるような仕組み作りがされているため、プロパー融資よりも審査ハードルは低いと言えるでしょう。

また、申し込む制度融資によっては、担保や保証人が不要のケースもあります。プロパー融資を申し込む場合、担保や保証人を求められるケースが大半となるため、制度融資ならではのメリットです。もちろん、制度融資へ申し込む際は金融機関と保証期間の2つの審査に通過する必要があります。制度融資の審査難易度より、プロパー融資の審査はハードルの高いケースが多いため、融資実績がない事業者には最適です。

制度融資のデメリットは融資実行までの期間が長い

制度融資を利用する際のデメリットとして、融資実行までの期間が長い点です。

一般の融資制度の場合、申し込んだ金融機関から直接借り入れます。審査手続きや面談などのフローを含めても、融資実行までは最短2週間〜1ヶ月です。一方、制度融資の場合、金融機関・保証協会・自治体の3社が関わっています。結果的に申し込みから融資実行までは平均2ヶ月〜3ヶ月の時間を要します。

制度融資の融資実行までのフローとしては、地方自治体へ利用したい金融機関を斡旋してもらい、申し込み手続きを行います。その後、金融機関からの審査と並行して、保証協会の審査手続きへ進みます。すべての審査が完了した後、事業者に対して融資が実行されます。プロパー融資にはかからない工数が多く存在するため、融資実行までの期間が長くなります。すぐに融資を受けたいと考えている事業者にとってはデメリットと言えるでしょう。

各自治体によって融資の制度が異なるため複雑

制度融資の手続きは、地方自治体によって異なります。制度融資を申し込む際は、申し込み手続きがしやすいことから事務所の所在地にある各自治体に申請するケースが多いです。

ただし、各自治体によって制度融資の種類・斡旋先の金融機関・融資内容が大きく異なります。対象の制度融資を利用したい場合でも、自社の希望とマッチしているか見定める必要があります。融資制度の精査は複雑であり、一定の時間がかかります。

もちろん、各自治体によって提供している制度融資の内容をまとめていますが、複数用意しておりどれを選ぶべきかわからないケースも少なくありません。自社にマッチする制度融資がわからない場合は、直接自治体へ問い合わせてみるのも一つの手と言えるでしょう。

制度融資と日本政策金融公庫はどっちがおすすめ?

新規事業者や新たに事業を始めようと考えている場合「制度融資と日本政策金融公庫のどちらがおすすめなの?」といった疑問が出てくるでしょう。

資金調達の手段の一つとして日本政策金融公庫の融資は、様々な事業者に利用されています。しかし、制度融資と日本策金融公庫の融資内容は大きく異なります。ここでは、制度融資と日本政策金融公庫がどちらがおすすめなのかを解説します。

日本政策金融公庫を優先して申し込みするのがおすすめ

初めて融資を受ける事業者の場合、日本政策金融公庫を優先して申し込みするのがおすすめです。

日本政策金融公庫とは、国が100%株式を常時保有する政府系金融機関です。国民の生活支援や小規模事業者に対しての資金調達をサポートしています。日本政策金融公庫では、創業まもない事業者やこれから起業を考えている事業者に対して手厚いサポートを提供している点が特徴です。

日本政策金融公庫の融資限度額は最大7,200万円(うち運転資金4,800万円まで)となるため、安定した金額を借り入れられます。申込の際の必須要件も制度融資よりも厳しくないケースが多いため、優先して日本政策金融公庫を利用しましょう。

融資実行までの期間が2週間〜1ヶ月と制度融資より早い

日本政策金融公庫の融資実行は、申し込みから最短2週間〜1ヶ月です。

制度融資は申し込みから最短2ヶ月〜3ヶ月程度となるため、スピード感を重視する事業者にとってもおすすめと言えます。日本政策金融公庫は融資専門の金融機関となるため、準備を整えていれば比較的スムーズに融資が行われます。

一方、制度融資は金融機関以外にも、地方自治体と保証協会の手続きが必要となるため、融資実行までに時間がかかってしまいます。審査スピードを重視しているなら、日本政策金融公庫の利用を最初に検討しましょう。

新創業融資制度なら無担保・無保証で融資を受けられる

日本政策金融公庫が提供する新創業融資制度なら、無担保・無保証で融資を受けられます。

制度融資の場合、保証協会を利用するため担保や保証人は不要です。しかし、保証協会に対して毎月保証料を納める必要があります。保証料は融資金額に対して1%〜3%程度の金額を毎月支払います。制度融資は毎月の利息に加えて保証料を支払う必要があるため、売上が安定しない事業者にとっては厳しいコストと言えるでしょう。

一方、日本政策金融公庫の新創業融資制度なら無担保・無保証で融資を受けられるため、毎月のコストを最大限抑えられます。もちろん、毎月利息の支払い義務はありますが、保証料がないだけでも助かる事業者は多いでしょう。

さらに、担保として不動産を用意する必要もありません。事業をこれから始めようと考えている事業者でも、一定の自己資金を集めておき要件を満たせば申し込みが可能です。

日本政策金融公庫の融資を受けると信用が付いて次に繋がる

日本政策金融公庫の融資を優先して受けることで、実績として信用を得られます。

融資実績がない状態でプロパー融資に申し込む場合、一定の自己資金を保有していたとしても、返済経験がないため審査に通らない可能性があります。一方、日本政策金融公庫は政府系の金融機関となるため、一度融資を受けられれば大きな実績となります。

「日本政策金融公庫から融資を受けた」という実績は、今後他の金融機関への融資を申し込む際に信用として活用できます。もちろん、制度融資へ申し込む際も融資実績がない事業者よりも、日本政策金融公庫から融資を受けたことのある事業者の方が審査に通過しやすいです。

融資実績は審査の通過率だけではなく、借入金額の増加も期待できます。面談時に金融機関に対して事業内容だけではなく、融資実績を用いて希望金額を説明できれば、希望の金額を借り入れられる可能性が高いです。信用を得るための手段として、日本政策金融公庫の融資を受けてみても良いでしょう。

日本政策金融公庫の後に制度融資から追加融資を活用する

制度融資の申し込みを考えている場合は、日本政策金融公庫の後に追加融資として活用しましょう。

追加融資とは、当初借り入れた金額に加えて新たに資金を調達する方法です。一般的に追加融資は初回に借り入れた金融機関へ申し込むケースが多いですが、必ずしも同じである必要はありません。日本政策金融公庫で借入が可能な上限に達している場合、追加融資を断られてしまうことも少なくありません。

日本政策金融公庫からの融資実績を活用すれば、制度融資から追加融資を得られる可能性が高いです。ただし、追加融資を受けるためには、事前に事業計画書のブラッシュアップや初回借入金を延滞なく返済するなどの条件をそろえる必要があります。今後の資金調達のためにも、日本政策金融公庫を優先して申し込みましょう。

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