全ての事業者にとってスムーズな資金調達は、経営を安定させるための重要なポイントです。
資金調達が滞ってしまっては企業としての成長は見込めず、事業が頓挫してしまうことにもなりかねません。
この記事では「資金調達とは?」という疑問への答えとなる言葉の意味や目的から、資金調達の種類、そして事業者向けとなる代表的な9つの資金調達方法について、メリットとデメリットを含めご紹介させていただきます。
自社に最適な資金調達方法をお探しの経営者様は、ぜひ最後までお読みください。
資金調達とは企業が事業を行うための資金を調達すること
「資金調達」とは、その文字が表すとおり、資金を調達する行為を指します。
一般的には企業が会社を開業・経営する際に必要な資金を、主に外部から調達することを「資金調達」と呼びます。
外部からの資金調達が上手く行かない場合には、自社が持つ資金のみで会社を運営しなくていけないということになります。
しかし外部からの資金調達を全く行わずに資金繰りを安定させることは難しく、資金ショートの確率を高めるなど非常にリスクの高い経営を行うことになりかねません。
つまり「スムーズな資金調達」は会社を存続・発展させていくためには欠かせない要素であり、いざという時に備えた選択肢を確保しておくことは、企業の経営を大きく安定させることにも繋がるのです。
資金調達を行う目的は運転資金確保・設備資金確保の2つ
企業が資金調達を行う主な目的となるのは、大きく分けて以下の2つです。
- 運転資金確保
- 設備資金確保
運転資金と設備資金には、意味や扱われ方に違いがあります。
例えば融資を受ける際に必要になる可能性の高い事業計画書では、基本的に運転資金と設備資金の額について別々に記載が求められます。
しかし誤った記載をしてしまうと、審査が長引くなど資金調達に悪影響を与える可能性は否定できず、それぞれの資金について正しい知識を持つ必要性は小さくはありません。
まずは運転資金と設備資金についての概要と、どのような資金がそれぞれに該当するのかをご紹介させていただきます。
運転資金とは「継続的に事業を運営する際に発生する費用」
企業が事業を営む際には、従業員への給料や事務所・店舗・工場の賃貸料や光熱費などの支払いが必要となります。
そのような、事業を継続的に行う上で発生する費用を、「運転資金」と呼び、以下のような費用が運転資金に該当します。
- 人件費
- 家賃、光熱費、通信費
- 消耗品の購入費
- 商品・材料の仕入費用
- 税金
- 広告料
- 業務を外注した際に発生する費用
もしも仕入費用が不足してしまった場合には、商品が販売できず売上げが確保できなくなることから、経営が悪循環に陥るのは避けられません。
このように運転資金が不足してしまうと、経営に大きな影響を与えてしまい、場合によっては即座に業務が停止してしまう恐れもあります。
また運転資金がショートしてしまうと、売掛金や約束手形を多く保有していながらも倒産してしまう「黒字倒産」に繋がりかねないことから、資金ショートに陥る前に資金調達を行う必要性は非常に高いと考えられます。
設備資金とは「事業に必要となる設備の購入や施設の確保などに必要な費用」
運送業にとってのトラックや建築業における重機など、事業を行う上で必要となる設備の購入費は設備資金に該当します。
また店舗やオフィスなどを賃貸で確保する際の契約費用や、内外装の工事費も設備資金に当たり、以下のような費用が設備資金として扱われます。
- 土地や建物の購入費用や内外装費用
- 機械や車などの購入費用
- 賃貸物件の契約に関係する費用
- 消耗品でない備品の購入費用
- 自社ホームページなどの作成費用
設備資金は継続的に発生することがない、不定期や一時的に発生する費用であり、資産性のある設備などを購入するための費用なども設備資金として扱われます。
開業時や事業拡大を行う際には多額の設備資金が必要となる可能性が高く、確保できない場合には事業が開始できない危険を高めたり、企業としての発展を妨げたりする原因となりかねません。
運転資金と同様に設備資金も、企業にとって重要な資金であることは間違いのない事実です。
資金調達を行うタイミングは開業前・経営の維持・事業拡大
潤沢な自己資金を抱えている企業は別として、ほとんどの企業は適切なタイミングで資金調達を行うことが会社経営においての重要なポイントとなります。
そして、資金調達を行うタイミングは大きく以下の3つに分けることができます。
- 開業前
- 経営の維持
- 事業拡大
この状況のどれに該当するかによって選ぶべき資金調達方法は異なり、適した選択肢を選ぶことで好条件での資金調達に成功できる期待も高まります。
しかし逆に言えば、選択肢を誤った場合には資金調達に時間がかかってしまう危険や、最悪の場合は利用対象となれない可能性も全くないわけではありません。
タイミングに応じた最適な選択肢を選ぶことは、経営者様に求められる重要な要素の1つともなります。
資金調達の方法は負債の増加・出資の受入・資産の売却から選択
資金調達の申込先探しを始める前には、まず資金調達の方法として大きく分けた分類の中から、どの方法を選ぶかを検討していただく必要があります。
- 負債の増加
- 出資の受入
- 資産の売却
資金調達の選択肢は、主に上記させていただいた3つとなります。
それぞれを利用したことで得られるメリットだけでなく、デメリットも理解した上で選択していただくことが重要となります。
また選ぶべき選択肢は会社規模や職種だけでなく、資金調達が必要となった状況によっても変わるため、状況に応じた資金調達の方法を選択していただくことが大切です。
ここからは「負債の増加・出資の受入・資産の売却」のそれぞれについて、概要やメリット・デメリットを解説させていただきます。
負債の増加(デットファイナンス)の概要
資金調達に金融機関からの融資を活用されている企業は少なくはないはずですが、融資のように利用することで負債が増加する資金調達方法を「デッドファイナンス」と呼びます。
また負債の増加によって得た資金は「他人資本」と呼ばれる場合があります。
そして負債の増加(デッドファイナンス)による資金調達には、下記のようなメリットとデメリットが存在しています。
メリット
- 大きな額の資金調達が可能
- レバレッジ効果が期待できる
- 経営権への影響がほぼない
デメリット
- 利息が発生する
- 経営状態が審査に大きく影響する
- 担保や保証人が必要な場合がある
負債の増加(デッドファイナンス)による資金調達では、億単位など大きな額の資金調達に成功できる可能性があります。
他にも借入によって調達した資金を事業拡大などにまわすことで、少ない資本金で大きな効果を得る「レバレッジ効果」も期待できます。
さらに経営への口出しなどが懸念される可能性がほぼないことも、負債の増加による資金調達のメリットと言えます。
ただし返済の義務が発生するため、負債額が増加すれば利息が大きくなり、返済の負担増加や債務超過のリスクを高めることになりかねません。
また経営状況などが審査で重要視されることから、個人事業主や中小企業にとって審査通過のハードルは低いとは言えず、場合によっては担保や保証人が必要になる点も、負債の増加による資金調達のデメリットとなり得ます。
出資の受入(エクイティファイナンス)の概要
主に株式の発行や投資家からの出資を受け入れることで資産を増加させる資金調達方法であり、「エクイティファイナンス」とも呼ばれます。
出資の受入(エクイティファイナンス)によって得た資本は「自己資本」と言う場合もあり、出資の受入は負債の増加による資金調達とは大きく違った特徴を持ちます。
メリット
- 返済義務が発生しない
- 自己資本比率が向上する
- 金融機関からの融資が受けやすくなる
デメリット
- 経営方針の自由度が下がる危険がある
- 短時間での資金調達には不向き
- 中小企業や個人事業主は出資者と出会いにくい
負債を増加させず資産を増やすことができる出資の受入(エクイティファイナンス)は、調達した資金に返済義務はなく、当然ですが利息が発生することもありません。
また資産の増加によって自己資本比率を高めることが可能となり、財務体質の強化によって金融機関からの評価が高まり、融資が受けやすくなるのも大きなメリットです。
しかし出資額や持株比率に応じて投資家や株主の発言権が強まることで、経営に関する自由度が低下する危険や、最悪の場合には経営権を奪われてしまうということもあり得ないとは言えません。
出資を受けるには様々な準備や手続きが必要となるため急ぎの資金調達には不向きであることや、中小企業や個人事業主が出資者と出会うこと自体が容易ではないことは、資産の受入(エクイティファイナンス)のデメリットとなるかも知れません。
資産の活用(アセットファイナンス)の概要
負債を増やすのが難しい状況や出資を受ける機会がない状況であっても、「資産の活用(アセットファイナンス)」による資金調達に成功できる期待は充分にあります。
自社で保有している資産を元手として行う資金調達方法を指し、資産の売却や担保に充てるのが代表的な手法となります。
資金調達に利用できる資産には、「土地・建物」だけではなく「商品の在庫」や「売掛債権」なども含まれており、一口に資産の活用(アセットファイナンス)と呼んでも様々な種類が存在しています。
メリット
- 資金調達スピードが速い
- 返済の義務が発生しない(売却の場合)
- 審査通過の可能性が高い
デメリット
- 資産を失うリスクがある
- 資産の価値が資金調達額に直結する
- 経営難を疑われる可能性がある
資産の活用(アセットファイナンス)は、融資を受ける場合でも担保があることで審査通過の可能性が高まり、短時間での資金調達の期待も高まります。
担保ではなく資産を売却する際にもスピード感のある資金調達が期待でき、さらに売買契約となる場合には当然ですが返済義務は発生しません。
ですが事業に必要な資産の売却は非常に危険であり、担保とする際にも返済が滞った場合には資産を失うリスクがあるという点には注意が必要です。
他にも資産価値が資金調達額に大きく影響するため、価値が低いと判断された場合には必要額の調達が行えない可能性があります。
さらに取引先からのイメージに影響を及ぼす可能性も、少し考慮し対処していただく必要があります。
事業者向け資金調達方法9選
ここまでは資金調達の目的や、仕組みによる選択肢について解説させていただきましたが、ここからは事業者向けの代表的な資金調達方法を、メリット・デメリットを含めご紹介させていただきます。
- 民間融資
- 日本政策金融公庫
- 各地方自治体の制度融資
- 投資家・ベンチャーキャピタル
- 第三者割当増資(株式の発行)
- ファクタリング
- リースバック
- 補助金・助成金
- クラウドファンディング
上記させていただいた9つの選択肢以外にも、事業者向けの資金調達方法は存在していますが、まずはこの中から利用を検討していただくことをおすすめいたします。
民間融資
都市銀行や地方銀行、信用金庫や消費者金融など民間の金融機関からの融資による資金調達は民間融資とも呼ばれ、事業者にとっての最も身近な資金調達方法と言えるかも知れません。
しかし一口に民間融資と言っても以下のように様々な選択肢があります。
- 銀行(都市銀行、地方銀行)
- 信用金庫
- 信用組合
- 消費者金融
- 信販会社
また融資を受ける際に信用保証協会からの保証を受けるか、直接融資を受ける「プロパー融資」を選択するかによっても、資金調達の難易度は大きく変わります。
他にも、限度額が低めで金利は高めになるものの短期間での資金調達が期待でき、手続きの利便性も高い「ビジネスローン」という選択肢も存在しています。
しかし民間融資による資金調達には以下のような共通するメリット・デメリットが存在しています。
メリット
- 必要な額だけの資金調達が可能
- 経営方針に関しての影響を受けない
- 企業としての信用の証明にもなる
デメリット
- 中小企業や個人事業主の審査通過は容易ではない
- 担保や保証人が必要になる場合がある
- 負債の増加による資金繰り悪化のリスク
金融機関からの融資では融資希望額を申込時に申請する形になることが多く、必要な額だけの資金調達が可能となります。
ただし融資額は経営状況などを元にした審査の影響を大きく受けるため、経営状況に不安を抱える中小企業や個人事業主は、希望額の資金調達が行えない可能性があるだけでなく、審査通過自体も難しくなることが考えられます。
また負債の増加は返済の負担を増す要因となり、債務超過や自己資本比率などの低下にも繋がりかねないため注意が必要です。
しかし融資を受けられた場合には企業としての信用を示す証拠にもなるなど、民間融資を受けるメリットも小さくはありません。
日本政策金融公庫
国が全ての株式を保有している日本政策金融公庫は、一般の金融機関が行う金融の保管を目的に含めている政府系金融機関です。
具体的には、民間融資を受けるハードルが低くはないと考えられている中小企業や個人事業主などへの融資を積極的に行っています。
また同じく資金調達の難易度が高めと言われている、「創業資金の調達」などにも柔軟に対応を行っていることも大きな特徴となります。
メリット
- 低金利での融資の期待が高い
- 創業前・創業初期でも利用できる制度がある
- 無担保・無保証人での借入も可能
デメリット
- 融資実行までに必要な期間が長い
- 書類作成など手続きの手間が大きい
- 金利の変動がほぼない
日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主への融資を民間の金融機関と比較して積極的に行っており、それ自体が利用する際の大きなメリットとなります。
さらに民間融資よりも低金利が設定される期待の高さや、創業前・創業初期を含めた様々な状況に対応できる数多くの制度が用意されていることなど、日本政策金融公庫を利用するメリットは多く、無担保・無保証人での借入も不可能ではありません。
中でも新創業融資制度はこれから起業を考えている方、税務申告を2期終えてない事業者が受けれる低金利(2〜3%ほどの変動金利制)で人気の融資制度の1つです。
ただし、日本政策金融公庫の審査は長引く傾向があり、必要書類も多めであることが影響して、急ぎの資金調達には不向きと言わざるを得ません。
また民間融資の場合は経営状況が上向きになった際には金利引き下げが行わることがありますが、日本政策金融公庫では金利の引き下げはあまり期待できず、状況によっては最終的な支払総額が民間融資よりも大きくなる可能性もゼロではありません。
各地方自治体の制度融資
制度融資とは、各地方自治体が主導し、民間の金融機関や信用保証協会との連携によって融資を受けやすくする制度のことを指します。
この制度をうまく活用できれば、民間融資が受けにくいと言われている中小企業や個人事業主も、資金調達に成功できる可能性を高められます。
メリット
- 信用保証協会からの保証が受けやすくなり金融機関の審査にも通りやすくなる
- 保証料や金利面で優遇される場合がある
- 事業者向けサポートが受けられる制度もある
デメリット
- 3つの機関が関係するため、手続きに時間がかかりやすい
- 制度ごとの上限金額がネックになる可能性がある
- 各地方自治体によって制度内容が異なる
各地方自治体は金融機関に対して貸付を行うための資金の一部預託を行ない、融資を行うためのハードルを引き下げるという大きな役割があります。
さらに融資を希望する事業者に対しては、信用保証協会へ支払う保証料の一部や金利面での補助を行うなど、支払いに関しての負担を軽減してくれる他、経営に関してのアドバイスなどのサポートが受けられる場合もあります。
しかし融資までに3つの機関が関係することで手続きに必要な時間は長くかかる傾向があり、各地方自治体が取り扱う制度融資には上限金額が設定されていることから、希望する額の融資が受けられない可能性もあります。
また取り扱っている制度融資は各地方自治体によって異なるため、情報収集の手間が発生し、状況によっては利用できる制度がないということもあり得ます。
投資家・ベンチャーキャピタル
投資家やベンチャーキャピタルによる資金調達は「出資の受入」に該当する資金調達方法です。
小規模の事業者にとって出資の受入は縁遠い選択肢に感じるかも知れませんが、チャンスを掴むことができれば企業経営の大きな転換点になるかも知れません。
メリット
- 調達した資金に対しての返済義務がない
- 資金使途に制限がない
- 投資家からのアドバイスや人脈が活用できる
デメリット
- 出資者の目に留まるまでのハードルが高い
- 経営方針への関与が懸念される
- 成長が見込めない場合の「足切り」のリスク
投資家やベンチャーキャピタルからの出資受入によって資本を増やす最大のメリットは、「返済義務がない」ということです。
資金使途の制限がないこともメリットとなりますが、投資家やベンチャーキャピタルとの繋がりにより人脈が広がれば、事業を拡大するチャンスなども巡ってくるかも知れません。
しかし多くの個人事業主や中小企業にとって、投資家の目に留まること自体ハードルは高めであり、出資を受けたことで経営の自由度が低下し最悪の場合は経営権を奪われる可能性や、成果が出ない場合の足切りのリスクも考慮しておく必要があります。
第三者割当増資(株式の発行)
「第三者割当増資」は新株を割り当てて資産を増やす、資産の受入であるエクイティファイナンスの一種です。
株式の割り当てには「公募増資」や「株主割当増資」もありますが、資金調達によるリスク軽減の意味でも「第三者割当増資」は有効な選択肢となります。
メリット
- 調達した資金に対しての返済義務がない
- 割当を行う相手を指定できる
- 引受先企業との繋がりが強まる
デメリット
- 割当を行う毎に株式の希薄化が進む
- 税負担が増加する場合がある
- 引受先との関係性が重要となる
第三者割当増資による資金調達でも、返済の義務は存在しません。
さらに公募増資や株主割当増資と違い、割当先を指定することができるため、経営への口出しを受けるリスクを大幅に軽減することが可能となります。
また取引先に割当を行った場合などは関係性が大きく強化されることにもなりますが、第三者割当増資を繰り返すことで、株式の希薄化が進み既存株主の保有割合の低下などに繋がります。
そのため発行価格などに注意を払いながら、理解を得れるよう手続きを進めなくてはならず、引受先との関係悪化を避ける努力を続けることも重要となります。
ファクタリング
売掛債権を売却し早期現金化するファクタリングは、資産の活用(アセットファイナンス)に該当する資金調達方法です。
またファクタリングは事業者向け資金調達方法として政府も認めており、法的には「債権譲渡契約」として扱われます。
メリット
- 短期間での資金調達も可能
- 売掛先の信用力重視の審査
- 債権を早期現金化できる
デメリット
- 手数料が割高になる場合がある
- 売掛債権の額面以上の資金調達は不可能
- 売掛債権を保有していないと利用できない
売掛債権の支払サイトが長い場合には、企業の資金繰りを苦しめる原因ともなりかねませんが、ファクタリングによって早期現金化することで、資金繰りの負担を軽減することが可能となります。
また赤字経営や債務超過の企業も、売掛先の信用力が高ければ審査通過が可能であり、契約方法や状況次第では即日ファクタリングを利用することで、今日中に資金調達できるのも大きな特徴です。
ですが、ファクタリングによる債権現金化には手数料の支払いが必須であり、売掛先の信用力が低いと高額な手数料請求が行われる場合がある点には注意が必要です。
リースバック
所有している不動産などの資産を売却し現金化した後も、その資産に対して賃貸契約を結び利用し続けられるのが「リースバック」であり、資金調達の仕組みなどから「セールアンドリースバック」という名称で呼ばれることもあります。
リースバックによる資金調達に利用可能な資産は、土地や工場、事務所などの不動産だけではなく、トラックなどの車両や製造設備など事業に利用している機器も含まれます。
メリット
- 環境を変えずに事業が継続できる
- 資金調達が短期間で行える
- 資産売却後の買戻しも可能
デメリット
- 賃料が発生する
- 売却価格が若干抑えられる傾向がある
- 不動産の改修や修繕が自由には行えない
リースバックは売却後の資産もそのまま利用し続けることができるため、環境を大きく変化させずに済むのが大きなメリットとなり、契約内容に含めることで買戻しも可能となります。
また融資ではなく資産の売却であることで、資金調達に必要な時間が短めで済むことが少なくはありません。
しかし資産の売却後も利用を続けられるというメリットと引き換えに、売却価格が相場より低めとなり賃料が相場より高めとなる可能性がありますので、少しご注意ください。
補助金・助成金
国や地方自治体が、定められた支給要件を満たした事業者に対して現金を支給する制度が、「補助金」や「助成金」です。
補助金と助成金の大きな違いは審査の有無であり、助成金は要件を満たせばほぼ確実に支給されますが、補助金は審査に通過する必要があります。
この2つの制度には以下のような、共通するメリット・デメリットが存在しています。
メリット
- 原則返済不要で資金調達が行える
- 社会的信用に繋がる
- 開業資金の調達にも利用可能
デメリット
- 常時利用できる制度があるとは限らない
- 後払いが多く建て替えの必要性がある
- 支給されるまでに時間がかかる
補助金・助成金は、どちらも原則的に返済不要であり、開業資金調達にも役立てることも可能です。
受給できるという事は、国が定めた要件を満たし場合によっては審査通過したという証拠にもなるため、社会的な信用を得られるようになるのもメリットです。
助成金は募集が通年行われていますが、補助金は公募期間が短いことも少なくはなく、どちらも必ず申し込める制度があるとは限りませんので、どのような制度が利用可能かの情報収集が必要となります。
支給までに長い時間を必要とするのは注意点の1つですが、制度の多くで後払いとなっており、ある程度の自己資金が必要になる可能性が高いこともデメリットになり得ます。
弊社、行政書士法人GOALは、本当に使える助成金・補助金情報のみんなの助成金を運営しております。補助金・助成金分野において精通した専門家がサポートしますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。
クラウドファンディング
クラウドファンディングはインターネット上で情報公開を行ない、不特定多数の出資者を募る資金調達方法です。
融資を受けることが出来なかった中小の企業が、クラウドファンディングでの資金調達に成功したという例も数多く存在しており、近年チャレンジする企業が大きく増加しています。
メリット
- 高額の資金調達に成功できる期待がある
- 情報発信の効果がある
- 世間の反応を見ることができる
デメリット
- 短期間の資金調達には向かない
- 不特定多数の支持を受けられるアイデアや技術が必須
- アイデアの流出に繋がるリスクがある
クラウドファンディングは、会社規模に関わらずチャレンジすることが可能であり、不特定多数からの支持を受けることができれば数千万円以上の資金調達に成功できる期待があります。
またアイデアを世間に発信することで、認知度の向上やアイデアに対しての世間の反応を確認するのにも役立ちます。
ただし急ぎの資金調達には向かず、情報発信の仕方次第ではアイデアの流出に繋がる可能性が存在しています。
資金調達方法は状況別での選択が重要
事業者向け資金調達方法は、この記事でご紹介した9つの選択肢以外にも存在しており、それぞれにメリットだけでなくデメリットがあり、一概にどれが優れているとは言えません。
また、どの資金調達方法が適しているかは状況によって大きく変わり、絶えず同じ選択肢を選び続ければ良いというわけでもありません。
- 開業前の資金調達
- 運転資金不足など資金調達を急ぐ時
- 事業拡大などのために大きな資金が必要な時
ここからは上記させていただいた3つの状況において、すでにご紹介した9つの選択肢のどれがおすすめかをご紹介させていただきます。
しかし最終決定は経営者様の意思で行っていただくべきですので、あくまで資金調達方法を選ぶ際の参考としてご一読ください。
開業前の資金調達
開業資金の調達を目的とする場合、審査などで事業実績が重視される資金調達方法は利用に適しているとは言えません。
また売却するための売掛債権が必須となるファクタリングなどの資産の活用(アセットファイナンス)も、利用できない可能性があります。
- 日本政策金融公庫(新創業融資制度など)
- 補助金・助成金
- クラウドファンディング
しかし日本政策金融公庫の新創業融資制度などは開業するための資金調達に適していますし、各地方自治体の制度融資の中にも開業資金確保のための制度が用意されている場合もあります。
また魅力的なアイデアがあるのであれば、クラウドファンディングに挑戦してみることで、大きなチャンスが掴めるかも知れません。
運転資金不足など資金調達を急ぐ時
運転資金が不足し資金ショートに陥ってしまうと、仕入れが不可能となり従業員への給与支払いができなくなるなど、会社経営に対して大きな影響を与えかねません。
そのような状況を回避するためには、短時間での資金調達が可能な選択肢が役立ちます。
- 民間融資(ビジネスローン)
- ファクタリング
- リースバック
民間融資は資金調達に時間がかかる傾向がありますが、「ビジネスローン」であれば素早い資金調達が期待できます。
ただしビジネスローンは融資限度額が低めであることが多く、金利が高めとなることも多いため、最小限の融資額で短期返済を行うことが大切です。
また資金ショートに陥る原因が売掛債権の支払いサイトの長さにある場合は、ファクタリングによって売掛債権を早期現金化することでも対応が可能となります。
ファクタリングは負債を増加させず、うまく活用することでバランスシートのスリム化による企業価値向上も期待できますが、売却に適した売掛債権を保有していない場合には、不動産などの資産をリースバックで売却することでも、短時間での現金調達が可能となります。
事業拡大などのために大きな資金が必要な時
会社が事業拡大などによって成長を続けるためには、大きな資金が必要になります。
自己資金で賄えることが理想とも考えられますが、自己資金を増やす間にチャンスを逃す可能性も否定できません。
- 民間融資
- 日本政策金融公庫
- 投資家・ベンチャーキャピタル
- 第三者割当増資
- クラウドファンディング
上記した5つの選択肢は負債の増加(デッドファイナンス)や資産の受入(エクイティファイナンス)に該当しますが、企業規模やその時点での経営状況などによって選択肢を選んでいただく必要があります。
また資金調達を行ったことで発生する、返済の負担の増加や経営方針への影響など、マイナス面にも目を向けていただいた上で、選んでいただくことも大切です。